<社説>自殺意識調査 社会全体で命支えよう


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 経済問題や健康上の問題に苦しみ、自殺の危機に直面している人を放置してはならない。気軽に悩みを打ち明けることができる環境を整えたい。相談窓口につなげる取り組みも必要だ。命を支え合う社会づくりが求められている。

 県が初めて実施した「自殺対策に関する県民の意識調査」によると、16%の回答者が「本気で自殺を考えたことがある」と答えた。
 内閣府の全国調査(2011年度)の23・4%を下回ったが、決して安易に構えてはならない。本県の自殺率が全国5位(11年)になったことなどを踏まえ、16%の深刻さを直視し、自殺対策に生かすべきだ。
 気になる数値がいくつかある。20代女性の24・1%、30代女性の26・8%が「ある」と答え、他の年代より突出している。男性では50代の17・2%が最多だった。
 毎年の自殺者の内訳では、男性が女性を上回っている。ところが今回の調査では自殺を本気で考えた人は70代を除く全世代で女性が男性より多かった。この点は重視しなければならない。仕事と子育ての両立に苦しむ女性の厳しい実情を見落としていないか、自殺対策の中で検証すべきだ。
 本県は「癒やしの島」と称賛されてきたが、今回の調査は「沖縄は暮らしやすい社会なのか」という問いを私たちに突き付けている。
 今調査では、回答者の63・5%が日常生活の中で不満や悩み、苦労、ストレスを感じることがあると答えた。ほぼ全国並みである。沖縄も「ストレス社会」が広がっているといえる。悩みやストレスの原因として、家族不和など「家庭問題」(45・8%)、仕事の不振など「勤務問題」(38・8%)が上位に挙がった。しかも、悩みを相談することにためらいを感じる人が34・9%に上っている。
 家庭や職場で孤立している人はいないか日常生活を見直そう。そこに救いの手を差し伸べることが最も重要な自殺防止策となる。職場内の相談窓口も必要だ。
 自殺対策に取り組む保健所や市町村など公的機関の認知度が低いことも今回の調査で分かった。悩んでいる人に声を掛け、必要な支援につなげる「ゲートキーパー(門番)」の存在も知られていない。広報周知活動を強化すべきだ。
 自ら命を絶つ人を出してはならない。暮らしの中で命を守るセーフティーネットの構築を急ごう。