<社説>復興費被災地負担 「寄り添う」発言に責任を


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 東日本大震災の集中復興期間が2015年度で終わることを受け、政府は後期復興期間(16~20年度)から事業費の一部を地元自治体に負担させる方針である。

 復興庁は、自治体の負担は限定的で財政の自立にもつながるとしている。果たしてそうか。
 青森、岩手、宮城、福島の被災4県は16年度以降5年間で復興に必要な費用を計8兆3900億円と試算している。
 これに対し、政府は国が負担する復興費用を5兆円前後と想定する。3兆3900億円もの開きがある。しかも国が示す5兆円は被災4県に限ったものではなく、全国での事業を含めた額である。地元自治体の負担は「限定的」とはならないだろう。
 阪神大震災では10年間の復興事業費16兆3千億円のうち約6兆円を地元自治体などが負担した。このため、政府内には復興事業費の全額負担は「阪神大震災の際も採らなかった異例中の異例の対応だ」との声が根強い。
 だが阪神大震災での地元負担を例に、被災4県にも負担を求めることは適当ではない。
 財政的に豊かな神戸市を有する兵庫県と被災4県の財政規模は大きく違う。
 その上、被災4県は震災前に比べ宮城2万人、岩手4万5千人、青森5万6千人、福島10万2千人も人口が減少している。自然と税収も減り、「(国の)特別な支援がなければ復興が滞る」(村井嘉浩宮城県知事)状況にある。
 竹下亘復興相は3月、テレビ番組で「全て国費で持つと市町村の財政規律が緩みかねない。少しでも自己負担し、自分たちのことは自分たちで決めるとの気概を示してもらいたい」と述べた。
 国民に誤解を与えかねない発言である。被災地の自治体と住民は自らの足で立ち上がろうとの気概がないと言っているに等しい。被災地は甘えているとしか聞こえず、失礼極まりない。
 安倍晋三首相はことしの政府主催追悼式で「被災された方々に寄り添いながらさらに復興を加速させる」と式辞を述べた。その言葉に責任を持つべきだ。後期復興期間も政府予算を充てる必要がある。
 被災地では昨年末時点で、災害公営住宅の完成率は16%、高台移転先の宅地整備率は11%でしかない。地元負担を強いることは復興を頓挫させる危険性がある。