<社説>ライカム開業 県経済との相乗効果に期待


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 米軍施設の返還跡利用にまた一つの事例が加わった。

 北中城村の米軍泡瀬ゴルフ場跡地に、県内最大規模の大型商業施設イオンモール沖縄ライカムが25日グランドオープンした。
 沖縄ライカムに購買人口が集中して周辺の商業地区が衰退するのではなく、既存の施設と相乗効果を上げ、県内の経済、雇用、観光振興に寄与できる施設となることを期待したい。
 県商工労働部が発表した2014年度の買い物動向調査によると、北谷町が買い物客を集める県内トップの吸引力を維持しているが、宜野湾市などに人が流れて吸引力は右肩下がりの傾向が続く。大型ショッピングセンターがない沖縄市は、主要自治体の中で吸引力が最も低く、購買人口を流出させている。沖縄ライカムの開店で、さらに減少傾向が加速することも予測される。
 そうならないためにどうするか。北谷町とライカムは、沖縄本島全体から見れば、ひとまとまりの商業空間と位置付けてもいい。マーケティングの専門家は、ひとまとまりの商業空間の端(東)と端(西)に魅力的な核店舗を配して、その間を回遊させる仕組みを提唱する。つまりライカムと美浜が両端の核店舗として地域間の移動を促せば、中部圏が一つのゾーンとして発展することは可能だという。美浜はライカムにない海、夕日、ホテルという強みを発揮したい。
 宮城和宏沖縄国際大学教授(経済学)の「移出入置換」も参考になる。沖縄ライカムのテナントのほとんどが県外企業だ。売る物を全て外から持ってきたら、移出入のバランスは悪化する。改善するには、外から入ってくる商材をなるべく地元産に置き換えていくことを提唱している。
 全体で3千人という規模の雇用と、本土並みの時給は県内の労働環境に影響を及ぼすだろう。既に人材獲得競争が激しくなっている。企業が人材を確保するために賃金を上げ、待遇改善に努めることで、雇用の質の改善につながることを期待する。
 ライカムは「リゾートモール」という戦略を打ち出しており、沖縄観光の魅力を高め、国内外の観光客の増加につながる新たな施設としても展開が注目される。
 ライカムは琉球軍司令部の略称で、在沖米軍の象徴だった。その略称が今後、地域と連携して脱基地経済発展モデルの象徴になることを望みたい。