<社説>「屈辱の日」63年 沖縄を政治的道具にするな


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 あす4月28日は対日講和条約が発効した日。敗戦国の日本本土は主権を回復し、連合国による占領状態から独立を果たした。一方でこの日を境に沖縄、奄美を含む南西諸島が日本から切り離され、米施政権下に置かれ異民族支配が始まった。その後に繰り返された住民に対する弾圧、人権蹂躙(じゅうりん)、基地被害の源流となるこの日を沖縄では「屈辱の日」と呼んできた。

 ことしは条約発効63年で、沖縄の施政権が日本に移って43年を迎える。名護市辺野古では現在、沖縄の大多数の反対の声を無視したまま、米軍普天間飛行場移設の新基地建設が進む。多くの県民は今も沖縄の主権は切り離されたままだと思っている。
 政府は2013年、この日に「主権回復」を祝う式典を開催した。沖縄から猛反発を受け、その後は開催されていない。式典を挙行すること自体、安倍晋三内閣が沖縄の苦難の歴史を念頭に置いていないことを如実に示した。
 米軍は条約発効翌年の1953年4月、土地収用令を発令し、住民が暮らす土地を次々と強制的に接収し、銃剣とブルドーザーで家屋を破壊し住民を追い出して基地建設を進めた。
 辺野古移設作業では、翁長雄志知事が岩礁破砕許可の区域外でサンゴ礁の破壊が確認されたとして海底作業の停止指示を出した。しかし沖縄防衛局はすぐに知事の指示に対する不服審査請求と執行停止申立書を提出し、農水省が知事の指示の効力停止を決めた。
 このため現場の作業は継続されている。沖縄の民意を踏みにじったまま工事を強行している姿は米統治下の「銃剣とブルドーザー」と何が違うというのか。
 翁長知事は安倍首相との会談で辺野古移設について「自ら土地を奪っておきながら、老朽化したから、世界一危険だから、沖縄が負担しろ。嫌なら代替案を出せと言われる。こんな理不尽なことはないと思う」と主張した。沖縄が置かれている不条理な現状を言い当てた正論だ。
 安倍首相は日米首脳会談に関して「沖縄の基地負担軽減を進めると確認したい」と述べた。本気で負担軽減をするのなら、辺野古移設を断念するほかない。それをせずして「負担軽減」を叫んでも、沖縄を政治的な取引材料の道具にしたままの虚言にしか聞こえない。これ以上、沖縄が屈辱を味わう状態に置かれるのは我慢できない。