日米両政府の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、名護市辺野古沿岸部での新基地建設を米軍普天間飛行場の継続使用を回避する「唯一の解決策」と再確認した。
両政府の硬直した思考には落胆せざるを得ない。海兵隊の抑止力が虚構であることは防衛相経験者や専門家が明らかにしている。
「解決策」には多くの選択肢がある。最も有効なのは普天間飛行場の即時閉鎖だ。
日本政府は米国の機嫌取りをやめ、米政府も必要性のない新基地を日本に求めるのはやめるべきである。
危険性除去にならぬ
辺野古移設を「唯一の解決策」とする理由の中に普天間飛行場の「危険性除去」の文言はない。共同文書には「運用上、政治上、財政上および戦略上の懸念に対処し、普天間飛行場の継続的な使用を回避するため」とあるだけだ。
「政治上」に包含されると強弁するかもしれないが明記していないのは、辺野古移設が「危険性除去」につながらないと両政府が認めていることの証しといえよう。
尖閣諸島を念頭にした「島しょ防衛」が成果のように喧伝(けんでん)されているが、米軍の支援は限定的なものでしかない。
日米防衛協力指針では、自衛隊と米軍は「陸、海、空または水陸両用部隊を用いて共同作戦を実施する」とした。だが島しょ防衛の「作戦を主体的に実施する」のは自衛隊であり、米軍は「自衛隊の作戦を支援し、補完するための作戦を実施する」にすぎない。米軍の支援内容は物資補給や情報提供などに限られるとみられる。
米政府は尖閣諸島を「日米安全保障条約5条の適用対象」としている。だが米軍投入は米議会の承認が必要となる。尖閣有事の際でも米政府が議会承認を求めたり、議会が承認したりする可能性は低い。米軍の役割を「支援」にとどめたのはその反映であろう。
米軍が自衛隊と共同で島しょ防衛で戦闘行為を実施することなどあり得ないということだ。
にもかかわらず、米軍が即座に参戦するとの誤解を国民に与える日本政府の印象操作はあまりにも不誠実である。
県が求め、安倍晋三首相が約束した「普天間飛行場の5年以内の運用停止」については口頭で米側に伝えただけで、共同文書には盛り込まなかった。仲井真弘多前知事の埋め立て承認の際に安倍首相が約束したことであり、政府は移設作業を即刻停止するのが筋である。
「戦争する国」へ変容
安倍政権はこれまで築いてきた「平和国家日本」を大きく変容させようとしている。日本は「戦争をしない国」として世界の信頼を得てきた。それが今、「戦争ができる国」にとどまらず「戦争をする国」へと大きくかじを切った。
米国は戦後この方、世界各地で戦争を引き起こし、紛争への介入を切れ目なく続けている。指針はその米軍に対する自衛隊の協力を地球規模に拡大し、平時から有事まで「切れ目のない」連携を打ち出している。自衛隊が米国の戦争に巻き込まれる危険性が飛躍的に高まったのである。
共同文書には集団的自衛権の行使容認など日本の取り組みを、米政府が「歓迎し、支持する」との文言が散見される。
米軍の肩代わりを買って出る国は日本以外にはなかろう。米政府の歓心を得ることが目的になってはいまいか。安倍政権が真に国民の安全を考えているとは到底思えない。
文書には日本政府の卑屈なまでの対米追従姿勢もにじむ。財政難に苦しむ米政府に新基地を提供するのもその表れだろう。米国に恩を売るため沖縄を利用することを許すことはできない。
戦後70年の節目の年に、日本は重要な分岐点に立っていることを国民は強く自覚し、危機意識を持つ必要がある。