<社説>「大阪都」住民投票 住民自治を考える契機に


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 行政の在り方を住民が自ら決める過去に例のない試みだ。その重い選択に大きな関心を寄せたい。

 大阪市を廃止し五つの特別区を新設する「大阪都構想」への賛否を問う住民投票が17日に投開票される。投票は4月27日に告示されており、賛成、反対両派が激しい舌戦を展開している。
 住民投票は過去に沖縄でも、基地整理縮小などを問う1996年の県民投票や米軍普天間飛行場の代替基地建設に関する97年の名護市民投票、自衛隊配備に関することし2月の与那国町住民投票が行われている。
 ただ今回の大阪市の住民投票は、自治体の条例に基づく実施とは異なり、大都市地域特別区設置法に基づき行われる。投票の結果が拘束力を持つ点が大きな特徴だ。
 投票で賛成が反対を1票でも上回れば大阪市は2017年4月で廃止され、東京のような自治体制度に再編される。都構想の実現に政治生命を懸けるという橋下徹市長の進退に直結する点でも、結果は大いに注目されている。
 橋下氏ら大阪維新の会は大阪の活性化策として都構想を提唱してきた。市を特別区に分割して福祉などの住民サービスに専念させ、インフラ整備などは大阪府に一本化することで二重行政が解消され、経済成長が図れると主張する。
 一方、都構想に反対する自民、民主、公明、共産の地元各党は、市が分割されて特別区ができれば、権限が弱体化され自主財源が低下すると指摘し「住民サービスは確実に下がる」と反論している。
 大阪は国内屈指の経済圏の一つだが、企業の本社機能流出などに歯止めがかからない。高齢化や貧困などの深刻さも指摘される。大阪の行方を決める今回の投票の重要性は言うまでもないが、地元財界などからも利点や欠点に関する説明が不十分との意見がある。
 政治的な思惑も絡み、各党の主張は激しさを増している。地域や暮らしがどう変わるのか、市民へのより丁寧な説明を求めたい。実施に最低投票率の規定はないが、民意を推し量る上で、投票率も大きく注目されることは言うまでもない。
 結果は、二重行政の解消を目指す他の政令指定都市をはじめ全国の自治体に影響する。自己決定権をめぐる議論が続く沖縄にも示唆を与えよう。大阪市民には非常に難しい判断となるはずだが、その一票を大切に行使してほしい。