<社説>NPT再検討会議 日本こそ核兵器禁止導け


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 一瞬にしておびただしい人命を奪い、残存する放射能が生態系に壊滅的な影響を与え続ける。核兵器は非人道の極みであり、その廃絶は人類共通の最重要課題だ。

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、広島と長崎の両市長が核兵器廃絶に向けた前進を強く求めた。
 松井一実広島市長は「核のない世界の実現には核禁止条約が必要だ」と訴え、田上富久長崎市長は被爆者が生きているうちに廃絶への道を示す責任があると強調した。
 原爆投下から70年の節目である。両市長の臨場感あふれる訴えに込められた被爆地の悲願達成は、人類共通の利益に結び付く。
 残された会期は約3週間。参加した約190カ国は、保有国同士、保有国対非保有国の相互不信を解消し、核兵器をなくす実効性ある道筋を紡ぎ出してほしい。
 NPTは核軍縮、拡散防止、原子力の平和利用を軸に1970年に発効した。5年に1度、再検討会議で履行状況を検証してきた。
 オバマ米大統領のプラハ演説後、核廃絶機運が高まっていた2010年の前回は核軍縮など64項目の行動計画が立てられた。だが、大半は実行に移されていない。
 非保有国が核兵器廃絶に連携を強める一方、保有国の米ロ、中国などがそれに反する動きさえ見せている。核兵器廃絶への道のりに暗雲が垂れ込めている。
 非保有国は核兵器の非人道性と不使用を訴える声明を相次いで出し、国際社会でその認識が着実に広がっている。昨年の国連総会で声明に賛同した国・地域は155に上り、加盟国の8割を占める。
 今回は60カ国以上の賛同国が後押しし、オーストリアが核兵器禁止を呼び掛ける文書を提出する。だが、核兵器保有国は禁止に抵抗し、段階的削減を主張する。米国の同盟国の日本なども禁止に後ろ向きだ。約1万6千発の核兵器の9割を保有する米ロはウクライナ情勢で対立を深め、中国、インドなども核兵器重視に傾いている。
 唯一の被爆国である日本は核廃絶後退の流れを断ち切る役割を果たすべきだ。核廃絶を訴えながら、米国に過度に配慮して核禁止に否定的態度を取る。対米追従を脱してこの二重基準を改め、核禁止を主導することこそ、国際社会の中で日本が担うべき責務である。