<社説>保育所死亡事故 子どもの安全に本腰を


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 全国の保育所で2004~14年に、少なくとも163人の子どもが保育中に死亡していたことが厚生労働省のまとめで分かった。

 安全でなければならない保育所での事故はあってはならない。死亡事故ならなおさらである。
 厚労省は再三にわたり自治体や保育施設に事故防止を呼び掛けてきたが、事故の減少にはつながっていない。これまでのやり方に実効性がなかったということである。
 保育行政は保育所と一体となって子どもたちの安全を確保する責任がある。保護者が子どもを安心して預けられるよう「事故ゼロ」の取り組みに本腰を入れるべきだ。
 効果的な再発防止策の確立には事故原因を徹底的に検証し、問題点を洗い出すことが必要である。しかしながら現状は心もとない。
 国は保育の受け皿拡充に向けて4月から始めた「子ども・子育て支援新制度」で、認可保育所や私立幼稚園、認定こども園に対し、死亡・重傷事故の自治体への報告を義務化した。
 だが、それで「前進した」とは言い難い。事故の検証方法も明確には決まっておらず、全く不十分である。事故件数の単なる集計に終わってしまう可能性がある。検証方法の確立を急ぐべきだ。
 認可外の施設数は認可保育所の3分の1しかないが、死亡事故件数は約7割を占める。にもかかわらず認可外や一時預かり事業は法的拘束力のある事故報告義務の対象外だ。厚労省は通知で報告を呼び掛けるだけである。
 これでは再発防止策どころか、現状把握さえおぼつかない。
 認可、認可外に関係なく、子どもを安全に保育することが求められていることに変わりはない。事故報告義務は認可外にも課すべきである。認可外も事故報告義務の対象とすることで、認可外自体の子どもの安全に対する意識の高まりが期待できる。
 認可外は待機児童の受け入れなどで大きな役割を果たしている。認可施設に劣らない保育環境を提供している施設もある。認可外が安全ではないのではなく、一部運営責任者の自覚の問題だろう。
 認可、無認可に関係なく子どもの安全への責任ある対応を強化させることも行政の務めである。併せて深刻な保育士不足の解消などによって「保育の質」を全国的に高めることも求めたい。