<社説>辺野古基金1億円 世論動かす発信力示した


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 新基地建設を拒否する県民の訴えは確実に全国へ広がっている。沖縄の民意を無視し続ける政府の姿勢に多くの国民が厳しい目を向けていることの表れでもある。

 米軍普天間飛行場移設に伴う新基地建設阻止を目的とした「辺野古基金」が4月30日時点で約1億2千万円に達した。基金設立からわずか3週間で1億円余の資金が集まったことを心強く思う。
 基金設立が、過重な基地負担を沖縄に強いる政府に対する厳しい世論を喚起する契機となった点にも注目したい。寄付件数4577件のうち約7割が県外から寄せられたものだ。
 新基地建設を強行する政府と対峙(たいじ)する県民の闘いは決して孤立していない。「辺野古ノー」の声に共鳴する国民の良心が闘いを支えている。そのことが県外からの多額の寄付という形で実を結んだ。
 普天間飛行場全面返還合意から19年が過ぎた。一貫して県内移設を拒否してきた県民を支持する方向に国民世論が動いている。そのことは世論調査にも表れている。全国紙の4月の世論調査を見ると、辺野古移設を進める政府の姿勢を「評価しない」とする声が多数を占める傾向が出ている。
 例えば、4月末の共同通信世論調査では、移設に向けて海上作業を継続する政府を45・6%が「評価しない」と答え、「評価する」の40・1%を上回った。13年12月の世論調査で辺野古移設の賛否を聞いた際には移設賛成が49・8%、反対が33・6%だった。
 昨年の名護市長選、県知事選、衆院選で新基地反対の民意が明確に示されたことが国民世論に影響を与えたとみられる。海上保安庁の過剰警備に象徴される政府の専横に対する反発もあろう。
 沖縄の発信力も世論を動かしているといえるだろう。キャンプ・シュワブ前や瀬嵩の浜などで回を重ねてきた県民集会は国民の耳目を集めている。ネットを通じた市民レベルの情報発信も広がりを見せている。
 菅義偉官房長官との会談で翁長知事が発した「キャラウェイ高等弁務官の姿と重なる」という沖縄戦後史を踏まえた発言も、国民の共感を集める上で効果的だった。
 「日本の平和と民主主義を守る」(呉屋守将氏)ことを理念に据えた辺野古基金も沖縄の発信力の一環として捉えることができる。さらなる世論喚起と合わせ、県民、国民の力で大きく育てたい。