<社説>英国総選挙 主権国家に突き付けた問い


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 地球を挟む二つの地域で相似形の動きが同時進行で進んでいる。

 英下院の総選挙が7日、即日開票された。キャメロン首相率いる与党の保守党が第1党となり、最大野党の労働党に大差をつけた。
 興味深いのはその次だ。スコットランド独立を目指すスコットランド国民党(SNP)が、スコットランドに割り当てられた59議席のほとんどを取り、第3党に躍進したのである。沖縄に割り当てられた4選挙区全てで与党候補が敗北した昨年の総選挙をほうふつとさせる。
 沖縄で勝ったのは全員、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する候補だった。SNPもスコットランドにある原子力潜水艦基地からの核兵器撤去を志向する。非軍事的志向もよく似ているのだ。
 スコットランド分権運動の高まりは1970年代のサッチャー政権のころにさかのぼる。福祉政策を切り捨てる中央政府の新自由主義的な弱肉強食型の政策に対し、スコットランドで反発が高まった。さらにイラク戦争で当時の政権党・労働党が米軍への従属と軍事志向を強め、スコットランドの民意との隔たりが広がった。SNP躍進の背景にはそんな経緯がある。昨今の中央政府と沖縄の関係に酷似しているではないか。
 国家主権が領土内で暴力を含む絶対権力を排他的に独占するのが主権国家システムだ。権限の決定と行使は国レベルの議会と政府が独占する。なかんずく外交・防衛に関してはそうである。
 スコットランドの動きはこの主権国家システムに対する異議申し立ての要素を持つ。近代主権国家体制に対するアンチテーゼという意味で世界史的大転換なのである。スペインのカタルーニャなどで同時並行的に運動が高まっているのも、そうした世界史的観点からみるとうなずける。
 辺野古での政府の基地移設強行とそれに付随する暴力的警備は、まさに主権国家システムの発動である。そこへの反発が沖縄で高まるのも、いわば世界史的な必然性があるのだ。
 英国の動きは、多数決による専制が少数派地域の自己決定を侵害する「民主主義の欠陥」を是正する動きとも言える。強権的に移設を進める安倍政権を大多数の国民が支持し、民意実現という人権が少数派ゆえに奪われている沖縄にとって、示唆に富む動きである。その是正の成り行きにも注目したい。