<社説>「島ぐるみ」全国へ 至誠は必ずや通じる


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 もはや「辺野古」は沖縄だけの問題ではない。この国の民主主義の在り方を問う象徴といってもいいだろう。

 「辺野古」を軸とした全国の連帯が広がっている。「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」は23日から安倍晋三首相の地元である山口県山口市を皮切りに、6月5日の大阪府、同6日の京都府など全国キャラバン運動を始める。
 各地での講演会やシンポジウムで「建白書」の理念実現を訴え、国内世論を喚起することが目的だ。
 同会議によると、辺野古と同様に民意を顧みず政府が強行しようとする原発再稼働やオスプレイ配備など、同様の課題を抱える地域と連携していく考えだという。
 あらためて「建白書」の訴えを確認したい。「米軍はいまだ占領地でもあるかのごとく傍若無人に振る舞っている。国民主権国家日本の在り方が問われている。沖縄県民総意の米軍基地からの『負担軽減』を実行していただきたい」
 主張は極めて易しい。頭ごなしに押し付けるのではなく、地域、国民の主権を認めよということだ。憲法前文にもうたわれる当然のことを言っているにすぎない。
 基地問題に限らず、被災地の復興費用負担、原発再稼働、改憲、安保法制など民意と異なる方向へ進む政権への不信感が根底にある。建白書に代表される地域の主張は、政府が国民主権をないがしろにしている証しともいえる。
 沖縄の主張が広がりを持ってきたのは4月以降、報道各社の世論調査にも表れている。辺野古への新基地建設については、賛否同数となった読売新聞を除き、在京紙、共同通信のいずれも反対意見が多数となった。NHKや民放各社の調査でも同様の結果が出ている。
 13日に設立総会を開いた「辺野古基金」には1億8500万円余が集まり、県外からの寄付も多い。島ぐるみ会議と共に、沖縄の意思を全国に発信する両輪として期待したい。
 20日は海外特派員協会の記者会見に翁長雄志知事が臨む。沖縄の現状を通して、日本の民主主義を問う絶好の機会となるだろう。
 孟子の言葉にある。「至誠、天に通ず」。真心をもってすれば、意思は天に届き、必ずや人は動く。愚直であろうと沖縄発の心は「至誠」そのものだ。粘り強い訴えで「新基地断念」、そして「国民主権」を実現するきっかけとしたい。