<社説>新基地拒否県民大会 戦後70年の重い決意だ 将来世代に責任果たそう


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 名護市辺野古への新基地建設を阻む民意の底流には、沖縄の苦難の戦後史を断ち切らねばならないという強い意思がある。

 「戦後70年」を大会名に冠した意義が幅広い世代の参加者に共有されていた。気温30度近い炎天下にもかかわらず、「辺野古新基地阻止」県民大会に3万5千人(主催者発表)が参加したが、会場にはそれ以上の熱気が渦巻いた。
 映画監督のオリバー・ストーン氏が連帯のメッセージを寄せるなど、県民大会は沖縄の民意の地殻変動の大きさを世界に印象付けた。

訪米要請の弾みに

 県民は「沖縄の尊厳」に裏打ちされた基地の島からの脱却、沖縄のことは沖縄が決める「自己決定権」の獲得という二つの固い決意を日々、強めている。
 共同代表ら弁士は沖縄のアイデンティティーと重なるしまくとぅばを随所で用いた。沖縄戦の住民犠牲と人権が踏みにじられてきた米軍統治時代など戦後の歩みを縦糸に、現在の新基地を拒む重層的な民意の広がりを横糸にした発言を繰り出した。
 自らの意思で沖縄のありようを決めることができなかった負の歴史に終止符を打ち、子や孫の将来世代に基地負担を残さないという不屈の誓いが説得力を宿していた。
 「新辺野古基地の建設を阻止することは普天間基地(問題)を唯一、解決する政策だ」。新基地を造らせず、普天間基地を閉鎖に追い込む決意をほとばしらせた翁長雄志知事は声のトーンを上げ、こう結んだ。
 「うちなーんちゅ うしぇーてぇーないびらんどー(沖縄人をないがしろにしてはいけませんよ)」
 「うしぇーらんけー(みくびるな)」と投げ付ける言い回しを避け、諭す響きがあった。
 沖縄の民意を無視し、新基地建設が「唯一の解決策」と言いはやす安倍晋三首相と沖縄に基地を押し付けて平然としている本土の「人ごとの論理」を改めるよう促す意味合いがあろう。
 この日一番、まさに地鳴りのような拍手が沸き、全ての参加者が総立ちになった。沖縄への差別と犠牲を断つことを切望する民意が凝縮されて示された。県民大会は何度も開かれてきたが、かつてない光景であった。
 菅義偉官房長官、安倍首相、中谷元・防衛相との会談を通し、新基地阻止の決意を正面から伝えてきた翁長知事の求心力は一層高まった。大会の成功は訪米要請行動の弾みになる。米国での行動に生かしてほしい。

沖縄の反転攻勢

 在京大手メディアの全国世論調査をみると、昨年12月の翁長知事就任からことし2月ごろまで新基地建設賛成が上回る傾向にあったが、菅官房長官と会談した際の翁長知事の旗幟(きし)鮮明とした発言が大きく報じられて以来、十数ポイントずつ、反対が上回る傾向に変化している。
 一方、辺野古阻止行動に生かす「辺野古基金」には、運動開始から1カ月超で2億1千万円超が集まった。その7割超が本土からの寄付である。
 基金共同代表の呉屋守将氏は「オール沖縄の闘いがオールジャパンに変化してきた」と評したが、民主主義の適用を求める沖縄の主張の正当性に対する理解が着実に広がっている。
 民意を組み敷き、新基地建設をやめない安倍政権に対する沖縄側の本格的な反転攻勢という局面に転換しているのである。
 大会決議はこう宣言した。
 「この沖縄の新たな海鳴りは、沖縄と日本の未来を拓(ひら)く大きな潮流へと発展しつつある。道理と正義は私たちにあり、辺野古に基地を造ることは不可能だ」
 対米追従を深める安倍政権はオバマ米政権に対して沖縄を質草のごとく差し出すことで忠誠を尽くそうとしている。
 しかし、県民大会でも示された強固な民意をこれ以上無視することは許されない。新基地建設を中止し、米本国への普天間配備部隊の撤収などの新たな選択肢を模索すべきだ。