<社説>大阪都構想否決 緊張感持ち行政効率化を


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 大阪都構想の賛否を問う住民投票があり、構想は否決された。推進した橋下徹大阪市長は民意を厳しく受け止めてもらいたい。

 一方、開票結果が問い掛ける意味も重い。反対70万5585票、賛成69万4844票で、差は当日有権者数のわずか0・5%にすぎない。文字通り世論を二分した。
 大阪府と大阪市の現状に対する住民の不満は明らかだ。府と市の政治・行政関係者は行政効率の抜本的改善に緊張感を持って努力すべきだ。
 大阪市を廃止して五つの特別区をつくる都構想は、橋下氏の強烈な個性で推進されてきた。「既得権益をたたきつぶす」と言い、二重行政を打破するというのがその主張だ。反対派は逆に、構想で大阪府と特別区、一部事務組合との三重行政になり、かえって非効率になると批判した。
 その効果も、賛成派は17年で2634億円の財源が浮くと述べたが、反対派はそのほとんどが都構想でなくても可能と主張した。違いはあまりに大き過ぎ、どちらの主張を信じればいいか分からないとの声も聞かれた。その意味で投票が橋下氏への信任投票の色彩を帯びたのは必然だ。投票結果は、敵をつくり、自分と異なる考えの人を力でねじ伏せる手法に対する拒否感の表れともいえるだろう。
 ただ、構想が出た背景にも注意したい。2004年には大阪市職員のカラ残業が発覚し、05年には職員へのスーツ支給に対し市監査委員が返還を勧告した。これらに住民が怒ったのも無理はない。
 3065億円もの巨費を投じたアジア太平洋トレードセンターは04年に破綻した。ワールドトレードセンターは1193億円を投じながら府に86億円で売却するに至った。湊町開発センターもクリスタ長堀も1千億円前後を空費した。市のあまりに無責任な「殿様商売」に批判が高まったのも当然だ。都構想以前に、行政内部や議会にこうした野放図な投資を許さない仕組みを構築すべきであろう。
 少子高齢化、人口減は着実に進んでいる。大都市でも独居老人世帯が増加し、コミュニティー維持が大きな課題だ。行政の効率化はもちろん、都市自体の効率化、いわゆるコンパクトシティーの必要性も浮上している。東京一極集中を打破するため、大阪を含む地域再興も必要だ。問うべきはこれらの課題への処方箋で、その論議こそが求められよう。