<社説>財政健全化 無駄の削減まず徹底的に


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 政府は2020年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政健全化目標達成に向けた具体的な計画を6月に策定する。

 目標達成には10兆円近い赤字を改善する必要がある。財務省はそのうち8兆円を歳出削減で対応するよう主張していたが、歳出削減額を5兆~6兆円にとどめたい官邸が押し切った。
 歳出削減は社会保障の効率化や公的部門への民間参入が柱となる。効率化の名の下に社会保障の質を低下させてはならない。この間の社会保障費の抑制は国民生活に影響を及ぼしており、これ以上の削減は避ける必要がある。
 計画策定に当たっては無駄な歳出を徹底的に洗い出し、削減することを優先すべきである。
 75歳以上の高齢者の医療費負担増のほか、東日本大震災の復興事業費の被災自治体一部負担などが歳出削減策として挙がっている。到底認められない。3年連続の増加で過去最大の4兆9801億円に膨らんだ防衛費などを見直すべきである。
 内閣府の試算では、15年度の基礎的財政収支の赤字額は約16兆4千億円。17年4月に予定通り消費税率を10%に引き上げ、16年度以降に名目3・1~3・9%の経済成長率を実現したとしても20年度に9兆4千億円の赤字が残る。
 達成が疑問視される名目3%を超える経済成長率を前提とすることは現実的ではない。法律で決まっていた消費税再増税を実施する環境を整えられなかったことからしても、アベノミクスには限界があることは明らかである。
 財政健全化に本気で取り組むならば、着実に実現できる計画にしなければならない。それには実態に沿った経済成長率の設定が不可欠である。
 目標達成年度を20年度とする方針にこだわらず、緩やかな財政健全化を目指すことを考えてもいいだろう。
 国債と借入金、政府短期証券を合計した「国の借金」はことし3月末で1053兆3572億円、1年で28兆4003億円増えた。国民1人当たり約830万円の借金を抱えている計算である。
 今回の計画はこれを減らすものではなく、これ以上増えないようにするものである。将来世代のために国民の理解を得るための努力も政府には求められる。