<社説>自殺志向相談最多 あなたは一人じゃない


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 自殺を考える人の相談を受け付ける「沖縄いのちの電話」が2014年に受け付けた相談のうち、自殺志向の相談が初めて2千件を超えた。相談件数1万1177件の18%に達する。

 県が14年に実施した「自殺対策に関する県民の意識調査」でも16%が「本気で自殺を考えたことがある」と回答しており、同様の傾向を示している。県内ではここ数年、年間300~400人が自らの命を絶っており、自殺対策は急を要する課題といえる。
 「いのちの電話」が公表している資料によると、全相談件数は2001年に約7700件で、14年間で1・5倍程度増えた。自殺志向の相談件数は01年の121件から14年は約18倍の2122件となっている。「いのちの電話」運営委員の渡久山朝裕・県立看護大准教授によると、電話回線を増やし、相談態勢を強化した上で、より深刻な相談者に優先対応した結果だという。数字以上に潜在的な自殺志向者はまだ多いとみられる。
 こうした相談を受け付ける「いのちの電話」の態勢も厳しい。現在、ボランティアの相談員は100人いるが、負担を考えると、1人当たり月に2回、1回当たり6時間が限度とされる。県外のように24時間対応をするには、さらに200人のボランティアが必要だ。
 県も自殺対策協議会などを設置し、防止に取り組んでいるが、こうしたボランティア育成などへの注力もさらに求められよう。
 「いのちの電話」に相談を寄せる自殺志向者のうち半数以上は「精神疾患」を訴えるものだった。人間関係など、小さな悩みが膨れ上がり、うつ病などに進んだケースが多いとみられる。医療機関との緊密な連携も鍵となる。
 自殺防止に特効薬はないが、すぐできることはある。同僚や友人、家族ら身近にいる人が悩みのありそうな人へ気を配ることだ。
 「あなたは一人じゃない」。「いのちの電話」のホームページに掲げられた言葉だ。一人で解決することは難しい。だからこそ頼ってほしいという願いが込められている。身近にいる人であればこそ「あなたを見守っている」というメッセージは相手の心に届くだろう。
 自殺防止は専門家だけに任せる状況ではなくなった。わがこととして一人一人が周囲に心を配る。それだけで多くの命が救えるはずだ。