<社説>国連審査報告書 基地の非人道性が暴かれた


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 沖縄の米軍基地の現状が、世界標準に照らしていかに非人道的か、白日の下にさらされた。

 国連人権理事会の普遍定期審査(UPR)対米審査報告書が、米国外の米軍基地が現地の人権を侵害していると明記し、改善を勧告した。勧告に法的拘束力はないが、在外基地について国際社会で公然と米国が批判される意味は大きい。
 米政府は米軍普天間飛行場の辺野古移設について「日本の国内問題」と述べて知らぬ顔を装っているが、自国の軍隊をめぐる問題が人ごとのはずはない。国際社会でのこの批判は痛いところを突くに違いない。
 米国は、まず手始めに辺野古移設(実態は辺野古新基地建設)の断念を日本政府に働き掛けるべきだ。改善勧告に正しく応答するなら、最終的には海兵隊を沖縄から撤退させるのが合理的選択だろう。
 国連人権理事会の普遍定期審査で米国が審査対象になるのは初めてだ。そこに沖縄の政財界や労働・市民団体の有志でつくる「島ぐるみ会議」の島袋純国連部会長(琉球大教授)が働き掛けた。
 昨年の名護市長選、知事選、衆院選4選挙区の全てで新基地建設に反対する人が当選した事実を示し、新基地建設の強行は国連自由権規約第1条が定める自決権に違反していると指摘した。
 さらに、枯れ葉剤と疑われる物質を土で覆い隠して米軍が土地を返還した事実、新基地建設による大浦湾のサンゴ破壊を示し、重大な環境権侵害と訴えた。女性に対する性暴力も第2次大戦直後から今に至るもやむことがなく、米軍人の起こす犯罪は直近でも83%が不起訴になっている事実を示した。
 「自由と人権、民主主義という価値観を共有する」はずの日米両国が公然と行う人権侵害に、審査関係者は絶句したに違いない。中国、アルゼンチン、フィンランドなど少なくとも6カ国が「自己決定権の尊重」「女性への暴力に正義を求める権利の保障」などを勧告した。画期的な成果だ。
 国連人種差別撤廃委員会は5年前、日本政府に「沖縄への軍事基地の不均衡な集中は現代的差別だ」と是正を勧告した。今回の勧告も日本政府への非難でもあると受け止めるべきだ。
 報告書は9月の人権理事会本会合で採択される見通しだ。島ぐるみ会議が望むように、翁長雄志知事自ら本会合に登壇し、日米両政府のありさまを広く訴えてほしい。