<社説>外来種混入未防止 豊かな海への影響は必至


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 豊かな海を埋め立てる新基地建設計画で、環境保全策のずさんさがあらためて浮き彫りになった。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に必要となる埋め立て用の岩ずり(砕石に伴い生じる土砂)を山口県などから調達する可能性が高いとみられる業者が、アルゼンチンアリなど外来種生物の混入を防ぐ対策を検討していないことが分かった。
 辺野古の埋め立て計画では2013年12月、普天間の県外移設公約に反する形で前知事が政府の埋め立て申請を承認した。その前月、沖縄防衛局は県外からの土砂に外来種が混入する懸念に対し、防衛局の責任で土砂の供給業者が対策を実施すると説明していた。
 生態系への影響に関する県の質問に回答したものだった。環境保全を業者に丸投げするようなその説明はあまりに抽象的で無責任だったが、実際には業者も対策を検討していなかった。
 中谷元・防衛相は、ことし夏にも埋め立ての本体工事に着手したいというが、最低限の約束さえ守られていない。話にならないどころか、最初から対策を施すつもりがないのではと疑いたくなる。
 アルゼンチンアリは飼育や運搬が法律で原則禁止されている特定外来生物だ。日本では1993年に広島で初めて確認され、辺野古埋め立て用の岩ずり採取が予定されている山口など瀬戸内地方でも生息域が拡大している。
 沖縄では確認されていないが、繁殖力が強く駆除も難しい。土砂に紛れ込み、数年以上の長い潜伏期間を経て出現する場合もある。一度入れば生態系だけでなく農業などへの影響も避けられない。
 採取業者はアルゼンチンアリの対策に関して「考えたことがない」「岩ずりは基本的には洗浄はしない」と説明している。一方の防衛局は移設計画に関する有識者の環境監視等委員会で、外来種の混入対策を具体的に協議していない。
 マングースやマツクイムシなど沖縄は外来生物の被害に苦慮してきた。実効性ある対策がないまま大量の土砂が運び込まれてよいはずがない。
 そもそも辺野古の埋め立ては、天然記念物ジュゴンやウミガメ、希少なサンゴ・海草などの生息環境を破壊する恐れが強く懸念されている。生物多様性豊かな海を埋め立てる新基地建設計画は、こと環境面に与える影響だけを考慮しても撤回されるのが筋である。