<社説>知事訪米 新基地阻止の決意示せ 沖縄を平和の緩衝地帯に

 これほど頻繁に訪米しなければならない県が他にあるだろうか。翁長雄志知事がきょう訪米する。

 直近の歴代4知事も訪米してきた。沖縄が自ら声を届けねば伝わらないからだ。沖縄の民意を顧みぬ日本政府の機能不全、差別性を再認識せざるを得ない。
 ただ今回は従来と異なる点がある。昨年の名護市長選と知事選、衆院選で辺野古新基地建設反対の候補が全勝した。県民大会も開いた。沖縄はあらゆる民主的手段で意思表示したと言っていい。かつてない歴然たる民意を知事は背負っている。新基地建設阻止の決意を堂々と訴えればいい。

陸戦条約違反

 強調したいのは沖縄の米軍基地が非人道的手法で存在する点だ。
 第2次世界大戦末期に住民が収容所に入れられていた間、米軍は沖縄で勝手に基地を造った。1950年代には住民に銃剣を突き付けて住居や農地を奪い、基地を拡張した。いずれも占領下の民間地奪取を禁ずるハーグ陸戦条約(戦時国際法)46条違反である。今、日米両国が造ろうとしている名護市辺野古の新基地もまた、沖縄住民の意思に反する強制接収だ。大戦後70年も国際法に違反し、今後も続けるというのである。
 政府は辺野古に基地を建設しなければ普天間飛行場は固定化すると言う。自ら土地を奪っておいて、基地が老朽化したから新たに基地を提供せよ、嫌なら居座ると脅すのはどう見ても非人道的だ。
 沖縄住民の自由、平等、人権、民主主義を守れない日米両政府が、どうして世界に「普遍的価値観の共有」をアピールできるのか。不思議でならない。
 沖縄経済は基地の「恩恵」で成り立っていると言う人もいるが、大きな誤解だ。むしろ基地は経済の阻害要因で、基地が無い方が飛躍的に発展するのは多くの実例とデータで証明されている。
 海兵隊が沖縄でなく日本本土や米本国、豪州などに置かれたら、たちまち機能を失うと信じる米国民はいないだろう。米国の安全保障の専門家も海兵隊の豪州移転を提言している。基地が移転したら「沖縄が経済的に困る」「抑止力を失う」という神話はとうに消え去っているのである。
 「沖縄は平和の緩衝地帯になりたい」。翁長知事は外国人特派員にそう語った。アジアの成長力を取り入れて発展するビジョンもある。基地の大幅削減後の未来像を沖縄は既に持っているのである。

ワシントン拡声器

 「ワシントン拡声器」という仕組みがある。新外交イニシアティブの猿田佐世氏が名付け親だ。
 日本の政党や官僚が国内向けに実現したい政策があるとする。だが国民の大多数には不人気だ。そこで、米国内にせいぜい30人、主だった人はたった5、6人しかいない「知日派」にその政策を吹き込む。アーミテージ元国務副長官、グリーン元国家安全保障会議アジア上級部長がその代表格だ。「知日派」はその政策を、自らの要求として発言する。米国民の大多数はその政策を知らないのに、発言はたちまち「米国の意向」となる。結果、政策は実現する。
 沖縄に基地を置きたがる外務・防衛両省の役人や一部の政治家ら「安保マフィア」がよく使う仕組みだ。われわれは、この「声の増幅器」に振り回されてきた。
 時にそれは「声の減衰器」としても使われる。新基地建設に対する沖縄の反対について日本の安保マフィアは米側に「補助金をつり上げるための手練手管」と吹き込む。だから反対の声は本気と思われず、過小評価される。メア元国務省日本部長が「沖縄はゆすりの名人」と発言したのがいい例だ。
 知事が訪米しなければならないのは、この厚い壁があるからだ。突破するのは容易でない。知事は毅然(きぜん)として「辺野古新基地は必ず阻止する。もはや不退転だ。普天間は直ちに返還し、海兵隊の移転先は県外や国外に探してもらいたい」と断言してきてほしい。(20面に英訳)
英文へ→Editorial:While in the U.S. Gov. Onaga must show grit to block new base