<社説>FIFA汚職 問われる組織の自浄能力


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 世界で最も人気のあるスポーツ団体の腐敗、金権体質が明るみに出た。

 国際サッカー連盟(FIFA)の副会長ら関係者9人が米国内での組織的な違法行為や収賄の罪で起訴された。
 副会長らには1991年から24年間で、賄賂などとして約185億円以上が渡ったとされ、見返りに国際大会でのスポンサー権などを与えたとの疑いが持たれている。
 2010年ワールドカップ(W杯)開催国選定や11年のFIFA会長選挙に絡む疑いも浮上している。
 FIFAには、以前からさまざまな疑惑、不正を指摘する声がやまなかった。しかし問題が表沙汰になるたび当事者のみに処分を科し、組織全体の責任は問わずにやり過ごしてきた歴史がある。
 捜査当局は、FIFAの汚職体質、金権体質に真っ向から切り込んで、組織内にはびこる不正を一掃してほしい。
 サッカーは、もはや巨大なスポーツビジネスだ。特にW杯では巨額の放送権料などのビッグマネーが動く。
 有料放送の世界的な普及で1990年代から放送権料は上昇を続け、スポンサーの協賛金収入も増大した。89年に約13億円だったFIFAの収入は2014年には約2580億円まで膨らんだという。
 W杯開催国選定は、加盟する209カ国・地域の代表者が集う総会ではなく、わずか25人の理事会で決めている。理事会メンバーともなれば、権力が集中する。その影響力の大きさは圧倒的だ。
 だが、国際オリンピック委員会(IOC)のような多選制限や定年制はなく、組織の新陳代謝が遅々として進まず、外部の目が届きにくかった。閉鎖的な組織形態は「不正の温床」と言われ続けていた。
 今回の事件は、長期間にわたるブラッター会長体制のうみが噴き出したといえるが、そのブラッター会長は総会で5選を果たした。FIFAの腐敗体質や閉鎖性にこれまでにない強い批判が集まる中、巨大組織の立て直しは会長に課せられた大きな責務だ。
 事件を組織の構造的問題と捉え、会長自ら先頭に立ち、不正に手を染めている関係者を駆逐すべきだ。腐敗した組織にメスを入れなければ、FIFAの信頼は取り戻せない。