<社説>沖縄戦意識調査 記憶継承に向き合いたい


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 県内の高校生を対象に5年ごとに実施している沖縄戦や米軍基地の意識調査で、ことしが沖縄戦終結70年と正しく答えられた生徒は54・7%だった。戦後65年の前回調査の70・9%より低下している。

 さらに沖縄戦の実相ともいうべき最も多かった戦没者を「沖縄住民」だと正しく回答できた生徒は83・4%だった。調査を重ねるごとに低下しており、沖縄戦を学ぶ機会が減少している懸念がある。
 一方で沖縄戦を学ぶことは「とても大切」「大切」と考えている生徒は合わせて94・1%に上っており、調査開始の1995年以降最高となっている。さらに今まで受けてきた平和学習についても「良かった」「とても有意義」の合計が過去最高の86・0%となっている。沖縄戦を学ぶ意欲を持ち、意義も十分理解している。生徒の欲求に応えるためにも、学習の場をもっと増やす必要があるだろう。
 調査では知る機会があった事柄の正答率は高くなっている。「従軍慰安婦」がどういう人を指すのかについての問いで「性の相手をさせられた女性たち」と正しく答えた生徒は43・8%で前回の17・8%から大きく伸びている。これは日韓の外交問題としてたびたびニュースで取り上げられたことで関心が高まったと考えられる。
 10年の前回調査で戦後65年の正答率が高かったのは07年に高校の教科書から「集団自決」(強制集団死)への軍の強制が削除された問題が起こり、沖縄戦への関心が高まったためとみられている。
 調査結果を見ると、沖縄戦を学ぶ機会を設ければ、生徒たちが正しい理解を深められることが浮かぶ。そうであれば平和学習の特設授業を充実させるなど、具体的な取り組みを進めるべきだろう。
 調査を高教組と共に実施した沖縄歴史教育研究会顧問の新城俊昭沖縄大客員教授は講演で「沖縄戦を学ぶことは未来に対する責任だ」と述べている。その理由は「基地のない沖縄の未来を想像できる生徒」を育てるためだという。正論だ。
 調査では「身近に沖縄戦について話をしてくれる人はいるか」に「いない」が43・1%、「いる」が39・7%となり、「いる」と「いない」が初めて逆転した。体験者が年々減少している。学校や家庭で沖縄戦の記憶をどう継承するのか。戦後70年の今、県民一人一人がこの課題に向き合いたい。