<社説>知事ハワイ訪問 歴史に根差す理解深めた


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 訪米中の翁長雄志知事は首都ワシントン入りに先立ち、約4万人の県系人が暮らし、歴史的関係が深いハワイ州を訪ね、県系のデービッド・イゲ州知事や同州選出の国会議員、ハワイ県人連合会と真摯(しんし)な意見交換を重ねた。

 翁長知事は米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設の問題点、その阻止を目指す沖縄の重層的な民意を説明した。上院議員から具体的な支援の言質を引き出すなど、米政府への要請前に一定の成果を挙げた。
 知事の記者会見を受け、ハワイの大手紙は「大きな負担を背負う小さな島の知事が、海兵隊基地を議論するためワシントンに向かう」と好意的に伝えた。県が新基地建設による環境破壊を危惧していることも報じられた。
 美しい海を資源にした観光を基幹産業とする島しょの自治体同士で問題意識を共有した形である。
 イゲ知事は日米が合意した在沖米海兵隊員2700人のハワイ移駐を受け入れる姿勢を明確にした。
 ハワイの地で新基地を拒む沖縄の強固な民意への理解を広げた意義を米政府への要請につなげたい。
 翁長知事と会談した米上下両院の3議員は知事の主張に理解を示した。特にブライアン・シャーツ上院議員は協力を惜しまない姿勢を見せた。上院国防小委員会に所属する同氏は「安全保障は地元の支持のないまま誤って政策を進めると、長期的にうまくいかない」と述べた。核心を突く見識だ。
 沖縄の民意に無視を決め込む安倍政権と、日本の国内問題として座視する米政府に疑問を投げ掛け、住民の理解を得られない安全保障の危うさを指摘したのである。
 ハワイで米軍は住民生活を守る基地運用を徹底している。県内で市街地を飛び交うオスプレイなどの軍用機はハワイの住宅地上空を飛ばない。沖縄での運用との二重基準もくっきり浮かび上がった。
 国防総省が知事と面談する担当者を局長級の副次官補に格上げしたのも、知事の動向を注視しての判断だろう。
 一方、翁長知事はハワイ県人連合会での講演で、沖縄戦で灰じんに帰した故郷の復興を物心両面で支援したハワイの県系人への謝意を熱く伝え、「沖縄を平和の緩衝地帯にしたい」と希望を語った。
 歴史に根差した沖縄とハワイの絆を未来志向で強める。今回のハワイ訪問はその足掛かりにもなる。