<社説>辺野古土砂連絡協 新基地阻止へ心強い共闘だ


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 名護市辺野古に新基地を造る埋め立て計画は県庁70棟分に相当する2100万立方メートルに上る膨大な土砂を必要とし、その8割が県外から持ち込まれる。

 沖縄の豊かな海を破壊するだけでなく、埋め立て用の土砂を搬出する本土各地の荒廃も招き、地域の自立を損なうことにつながりかねない。土砂搬出を許さないという決意に裏打ちされた新基地建設を阻むことを目指す運動が西日本で始動した。
 米軍普天間飛行場の移設に伴う新基地建設に使われる膨大な土砂が採取される予定地の環境団体など7団体が「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」を結成した。
 新基地に反対する署名運動の軸になったり、土砂搬出の動きを警戒したりするなどの取り組みを掲げる。新基地建設の不当性が本土でも共有され、阻止のうねりが広がる。連携の意義は大きい。
 共同代表に就いた環瀬戸内海会議の阿部悦子共同代表は「故郷から辺野古に土砂を運べば、私たちは加害者になる。辺野古のように現地に座り込んででも止めたい」と決意を語った。
 地域のことは地域が決める「自己決定権」の発揮を志す点で、沖縄と連絡協の理念は共鳴する。沖縄にとって当事者意識を通わせた心強い動きである。
 情と理を尽くし、新基地建設に抵抗する沖縄は決して孤立していない。新基地建設に反対する全国的な世論が伸びている。今回の連絡協の結成は地域の将来を憂う訴えが、心ある本土の人たちを行動に駆り立てたことを証明している。
 連絡協には鹿児島県の奄美大島、瀬戸内海、山口、福岡などの採石地を抱える地域の団体が参加した。いずれも経済基盤の弱さが災いする形で環境をないがしろにした採石が横行していることに危機感を強めている。青い海が「死の海」に変容した事例も共有された。
 決議文は「高度成長下で資材供給を担わされ、破壊と公害に苦しんできた」とした上で、「新たな土砂の大量供出は再びふるさとの荒廃を加速しかねない」と危機感を表明し、計画撤回を促した。
 県内では、県議会与党が県外からの土砂搬入を制限する条例案を提出する見込みだ。土砂の搬出元と搬入先の共闘は、沖縄の民意に無視を決め込む安倍政権による新基地建設強行に歯止めをかける実効性ある手だてになり得るだろう。