<社説>沖縄戦体験 語り継ぐことに現代的意義


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 戦争の足音が聞こえる。そんな危機感が徐々に「水位」を高めているのではないか。

 今回の琉球新報・沖縄テレビ戦後70年合同世論調査の結果は、そのような県民の皮膚感覚の反映と言えるだろう。国会審議中の安保法制については反対が73%に達し、賛成の16%を大きく上回った。
 自衛隊の活動範囲を世界中に広げることについても、憲法9条改正についても同様だ。自衛隊の活動拡大が日本への攻撃を呼び、9条改正が戦争への歯止めをなくす。すると沖縄が再び戦場になり、耐えがたい惨禍を招く。真っ先に戦場にされかねない沖縄だからこその直感だ。
 基地集中のありさまを見れば、安保法制の最大の当事者は沖縄だ。当事者の同意を得られない安保法案はやはり廃案にするほかない。拙速審議は断じて許されない。
 それにしても、県民の軍事基地への反発、平和希求への思いの強さなど、「沖縄らしさ」の全ての原点は沖縄戦体験にある。それをあらためて思い知らされた。
 沖縄戦体験の継承について、「もっと語り継ぐべきだ」が75%と、「現在の程度」19%を大きく上回った。前述の安保法制、自衛隊活動拡大のいずれも賛否の差は約60ポイント、9条改正も大差で、似た傾向にある。県民がこれら一連の「戦後レジーム(体制)見直し」の動きと沖縄戦を関連付けて受け止めていることを物語っている。
 沖縄戦を知るからこその、安全保障に対する皮膚感覚なのであろう。「もっと語り継ぐ」ことの現代的意義はここにある。安保法制が変わり、戦争の可能性が変わりかねない今だからこそ、過去の経緯と戦場の実際を正確に把握しておくべきなのである。
 興味深いのは自己決定権拡大を求める声が88%に達したことだ。辺野古新基地建設をめぐる、民意を無視した政府の強硬姿勢に対する反発の表れなのは間違いない。
 半面、今後の沖縄について「現行通り日本の1県のまま」は67%を占めた。自己決定権と一見矛盾する結果だ。矛盾を読み解く鍵は「不安」ではないか。独立または特別自治州になることへの漠然とした不安の反映だとも考えられる。
 不安は常に知識不足と表裏一体である。自己決定権を確立する道筋、確立した場合の社会の在り方を、冷静かつ正確に提示することが論議の手始めとなろう。