<社説>18歳選挙権 主権者教育の充実不可欠


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 選挙権年齢を「18歳以上」に引き下げる公選法改正案が4日の衆院本会議で全会一致で可決され、参院に送られた。早ければ17日の参院本会議で成立する。

 来年の参院選から高校3年生を含めた18~19歳の約240万人の未成年者が有権者に加わる見込みである。
 2014年衆院選では、70歳代の投票率70・01%に対し、20歳代は32・58%にとどまった。20歳代は1967年の66・69%の半分以下にまで低下している。選挙年齢引き下げを、政治離れが進む若者の積極的な政治参加を促し、政治を活性化させる契機としたい。
 それには主権者教育の充実が不可欠だ。文部科学省は選挙の意義を解説した高校生向けの副教材を全国の高校に配布する予定である。模擬投票のような参加型の授業も全国で実施する方針である。
 主権者意識、言い換えれば「市民性」をどう植え付けるかだ。この社会の課題は市民が自らの意思で克服することができる。そしてそれは社会の課題をきちんと認識し、解決策を十分に議論するところから始まるということを体感してもらうことが欠かせない。
 高校生の政治活動の在り方も課題だ。学生運動が高校まで拡大したことを受けた1969年の文部省(当時)通知は高校生の政治活動を学校の内外を問わず禁止した。
 文部科学省は学校外でも政治活動を一定程度認めることを視野に通知を見直す方針である。法案提出者の自民党の船田元氏も、学校外に限って休日などに集会やビラ配りに参加できるようにする試案をまとめている。
 18歳以上の高校生に選挙権を与える一方で、政治活動を学校外に限ることは妥当といえるだろうか。若者の政治参加を促すための法改正の趣旨に反しないか。
 将来を担う世代の声を国政に反映させることの意義は極めて大きい。政治活動の自由を制限することは、その意義を消失させかねない。政治への無関心を拡大させないためにも、学校運営に支障を来さない範囲内で校内でも認めるべきである。
 新たに有権者となる「18歳以上」の若者に求めたい。政治は有権者一人一人の投票で変えることができる。選挙権の重みを自覚して日ごろからさまざまな問題に関心を持ち、選挙の際には投票の権利を積極的に行使してほしい。