<社説>知事訪米要請終了 粘り強く民意を伝えよう


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 今後も粘り強く沖縄の民意を訴え続けていくことが肝要だ。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画の撤回を米関係者に直接働き掛けるため、訪米していた翁長雄志知事が帰任した。
 県民の多くが国土の0・6%の沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中する現状を理不尽に感じ、辺野古の新基地は新たな負担になると危惧している。
 知事が今回、「(過度な基地負担で)これまで日米安保を支えてきた県民が辺野古に移すのは我慢できないと言っている」と率直に伝えた点は意義深いことだ。
 これに対し米政府側は辺野古移設の現行計画が「唯一の解決策」(アバクロンビー国防総省副次官補代行)との立場を崩さず、議論は平行線に終わった。
 厳しい反応は知事の言葉を借りるまでもなく、想定内だ。知事訪問を前に米国務省は「日米は辺野古が唯一の解決策だと再確認している」と予防線を張っていた。
 国務省は知事との会談直後、辺野古移設推進は変わらないとの声明を出した。現場で取材を終えた記者にも追い掛けて発表文を手渡すほどの念の入れようだった。
 知事の訪米に対する警戒感がうかがえる。県民大会開催など沖縄での反発の高まりに加え、作業の強行に全国的な批判が強まっていることへの焦りが背景にあろう。
 知事は対日政策に影響力を持つマケイン上院軍事委員長とも会談した。マケイン氏は辺野古移設を支持する姿勢を変えなかったが、今後も対話に応じる姿勢を示した。面談の実現自体に気をもんでいた知事側からすれば、今後の足掛かりができた点は評価されよう。
 翁長知事は「来る前に比べれば大きな上乗せがあった。それを糧に一歩一歩進んでいきたい」と総括した。米側に沖縄の民意を直接訴えた今回の成果を踏まえ、今後は埋め立て承認の取り消し検討など、移設阻止への具体的な行動が問われることになる。
 沖縄県知事の訪米は実に5人目だが、菅義偉官房長官は「辺野古移設が唯一の解決策と認識して帰ってこられるのではないか」と述べた。不適切な発言で、県民にも極めて失礼だ。
 日本政府が沖縄の要望を受け止めないからこそ歴代知事はコストと労力を払って何度も訪米してきた。それさえ分からないなら「沖縄に寄り添う」といった歯の浮いた言葉を二度と使うべきではない。