<社説>性暴力被害者支援 最良の方策で着実に救済を


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 「県性暴力被害者ワンストップ支援センター(略称・♯7001)」の初めての運営検証委員会が開かれ、2月の開所から延べ112件の相談があったことが報告された。

 相談者は10~70代の26人で、内容はレイプ9件、強制わいせつ7件、配偶者らによる暴力(DV)6件、性的虐待1件、その他1件、詳細を聞くまでに電話が切れてしまうなどの不明2件だったという。
 4カ月で112件の相談を多いか少ないかで単純に評価すべきではないだろう。性暴力が私たちの社会に存在し、被害を受けて心身共に苦しむ多くの人がいることを心に留め、被害者を救う最良の方策を探り、着実に進めることが私たちの責務である。
 県のワンストップ支援センターはことし2月2日、相談センターを中心とした「連携型」「平日午前9時から午後5時までの受付時間」で稼働した。設立前、当事者団体らが求めていた「病院拠点型」「24時間365日体制」からは後退した形でのスタートだった。
 被害者にまず必要なのは、寄り添ってくれる人の存在、心のサポートと医療支援であり、次に警察の捜査や法律家による法的支援だ。これらの支援を被害者が動き回ることなく、1カ所で総合的に受けることができる体制、これこそがワンストップセンターの役割だ。
 県は2017年度をめどに「病院拠点型への移行と24時間体制を目指す」としているが、遅いと言わざるを得ない。
 現在の連携型では、ワンストップの機能を十分に果たせない恐れがある。「次善の策」にすぎない。
 性暴力・性犯罪は時間や曜日を選ばない。大阪のワンストップセンターのスタッフは、県内で開かれた講演会で「来所する初診の67%が夜間や休日である」と報告している。より多くの被害者を救うため「病院型」「24時間365日」の早期実現を求めたい。
 課題は医師と支援員らの人材確保、安定的な維持・運営のための財政的支援だ。地方公共団体や民間団体に任せるのではなく、国は財政を含めた支援を積極的に行うべきだ。
 また、日本には性暴力をなくすための包括的な取り組みを定めた法律がない。「性暴力禁止法」と関連法を整備して、加害者の厳罰化、被害者支援の強化を求める動きも出てきた。被害者救済のため、政治に課せられた役割も大きい。