<社説>土砂採取・搬入制限 民意なき地形改変は不当だ


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 沖縄の貴重な自然や生態系を乱す行為は何であれ許されない。まして大規模な基地建設で環境に悪影響を与えるのは論外だ。

 その意味でうなずける動きである。県議会与党は県外からの土砂搬入を制限する新たな条例案を6月定例会に提出する方針だ。
 県外からの搬入だけではない。県内の大規模土砂採取についても、国や自治体を規制対象とする法的枠組みも検討している。県土保全条例の改正だ。
 そもそも県民の合意なく大規模に地形を改変すること自体、不当である。それが民意に背く基地建設ならなおのことだ。まして環境破壊は取り返しがつかない。いかなる意味でも検討は妥当であり、早急な法的整備が求められる。
 県外からの土砂搬入規制は、危険な外来種の混入を防ぐのが狙いだ。懸念の筆頭はアルゼンチンアリである。辺野古埋め立て用の岩ずり採取が予定される瀬戸内で生息域が急拡大している。繁殖力が強く、ひとたび侵入すれば在来種は瞬く間に全滅する可能性が高い。
 採取業者は防除策を「考えたことがない」と話している。混入を完全に防ぐには、土砂全てをいったん水中に沈めるなどしない限り難しい。だが千数百万立方メートルもの大量の土砂を県外から持ち込むのだ。全て水中に浸すなど不可能であろう。だとすれば、そもそも混入防止自体が不可能である。
 新条例は土砂の採取地ごとに届け出を義務付け、外来種の防除対策を示すよう求め、混入しない根拠も証明させるという案が有力だ。根拠が不明確なら繰り返し書類提出を求めるなどして厳密に審査するという。うなずける対策だが、実効性を高めるため、届け出制にとどまらず許可制とすることも検討してもらいたい。
 辺野古新基地に使う土砂は2100万立方メートルで、県庁70棟分という前代未聞の量だ。8割は県外から、2割はキャンプ・シュワブ内陸部などを想定している。県土保全条例改正は、その残り2割も制限するものだ。
 県土保全条例は乱開発を防ぐのが趣旨である。検討する改正案は民間業者だけでなく国や自治体にも適用するというものだ。行政を対象とするのは難しいと見る向きもあるが、県民の合意なき大規模な土地改変は乱開発と称すべきであろう。こちらは6月定例会での提出見送りもあり得るが、いずれにせよ適切な制限を講じてほしい。