<社説>MERS感染拡大 水際対策、情報共有万全に


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 韓国で中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス感染が拡大し、死者も日ごとに増えている。最初の患者から感染した人物を介してさらに感染が広がる「3次感染」も起き、国民を不安に陥れている。

 日韓両国では例年、約500万人が往来し、県内には1日当たり約650人の韓国人観光客が訪れている。日本にも感染者がやって来る可能性は十分ある。
 大切なのは2次感染を防ぐことである。空港などで水際対策を徹底する必要がある。検疫態勢を再点検し、備えを万全にすることが求められる。
 MERSは2012年に初めて報告され、主に中東地域で患者が多い。インフルエンザウイルスと異なり、人から人への感染は限定的とみられているが、甘く見てはならない。
 2~14日の潜伏期間を経て熱やせきが出て、急速に肺炎に進行する。高齢者や慢性疾患のある人は重症化する傾向があり、注意が必要だ。世界保健機関(WHO)によると、1日までに感染者は世界で計1154人、そのうち431人が死亡している。
 ワクチンや治療薬はなく、対症療法が中心になり、患者は隔離病棟に入院し、回復を待つことになる。
 感染拡大を防ぐには感染者を確認した直後の適切な対応が何よりも重要となる。韓国での感染拡大は当局の初動対応のまずさが大きな要因である。
 韓国当局は最初の感染者が確認された直後、感染者と同じ病室の患者や家族計約60人を隔離し「強力で広範囲な措置だ」とした。だが、その約1週間後に別の病室でも感染が確認された。急きょ隔離対象を拡大したが、その間に感染の恐れのある多くの人が外出するなどしたため、感染が拡大した。当局の責任は極めて重い。
 感染を他国に拡大させないためには、リアルタイムで各国と情報を共有する必要がある。日本の国立感染症研究所と韓国の担当機関の間には情報共有の取り決めがあるが、今回は機能していない。
 韓国当局は感染者が出た病院名さえ、なかなか公表しなかった。感染症は自国だけの問題ではない。全ての情報を各国の担当機関と共有することが感染拡大防止には不可欠である。