<社説>サミット閉幕 中ロとの対話継続が重要だ


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 先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)の焦点は、参加していない中国とロシアだった。両国を関与させた協議をいかに構築していくかが今後の課題だ。

 ドイツ南部エルマウで開かれたサミットは、中国とロシアが進める「力による現状変更の試み」を非難する首脳宣言を採択して閉幕した。国際社会でのG7の地盤沈下が指摘される中、中ロ両国への対処で結束する姿勢をアピールした格好だ。
 首脳宣言は「領土の一体性」「国際法や人権の尊重」を重視すると強調。中国を名指しすることは避けたものの、海洋秩序に関して「東シナ海と南シナ海での緊張を懸念する」と打ち出し、「大規模な埋め立てを含む一方的行動に強く反対する」と表明した。
 中国はフィリピン、ベトナムなどと領有権を争う南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島の岩礁で、大規模な埋め立てを進めている。中国人民解放軍は埋め立てが軍事目的だとも明言しており、関係各国と対立を深めている。誠に憂慮すべき事態だ。
 G7は今回、昨年の首脳宣言よりも表現を強める形で埋め立てに反対を表明した。中国政府はこれを重く受け止めるべきだ。埋め立ては、中国が東南アジア諸国連合(ASEAN)との間で2002年に署名した「南シナ海行動宣言」に反する行為でもある。即座に中止するよう重ねて求めたい。
 ただ今回のサミットでは中国へのけん制を強める日米と、成長を続ける中国との経済関係を重視する欧州との温度差も表れていた。
 一方、宣言はロシアのクリミア併合を非難し、ウクライナ危機をめぐる停戦合意の完全履行がない限り、対ロシア制裁を継続する方針も示した。だがロシアへの圧力強化を訴える米国と、対話を重視する欧州や日本とで立場の違いも露呈した。欧州はエネルギーで依存するロシアに配慮せざるを得ない事情がある。日本は北方領土問題を抱える。
 新興国の台頭などでG7の影響力低下が指摘される中、各国の利害も複雑に絡み合う。協議の場に中ロ両国を呼び込む協調行動は容易ではないが、G7の行動力は今後ますます問われよう。
 中ロ両国がそれぞれの立場を軟化させる兆しはまだ見えない。各国には圧力をかけるだけではなく、対話を継続する努力が何より求められていることは言うまでもない。