<社説>オスプレイ合意 約束守れぬなら飛行やめよ


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 国家間の取り決めをあっさりと否定するような発言に驚くが、そもそも合意の履行自体に無理があることを認めるものでもあろう。

 米軍普天間飛行場を訪問した日本記者クラブ取材団に対し、同基地のピーター・リー司令官やクリストファー・ディマース航空安全担当官らが垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの運用について説明した。
 この中でディマース氏は住宅密集地上空では飛行を避け、プロペラを上向きにしたヘリモード飛行は米軍施設上空に限るとした2012年9月の日米合意をめぐって「安全に飛行するための(別の)飛行基準に従って飛ぶ」と述べた。
 「飛行基準」に関し「いかなるモードでも飛行できることが安全運用を可能にする」とも述べ、合意が定めるヘリモード禁止などの制約は加えるべきではないとした。
 オスプレイの安全策に関する合意は、普天間への配備を前に取り決められた。開発段階から墜落事故が相次いでいたことで、配備への不安を払拭(ふっしょく)する狙いがあったはずだが、そのルールさえ否定するような発言は看過できない。
 ただ、日米合意をめぐる現状を率直に認める発言とも言える。住宅地上空を避けるなどとした一連の合意内容はほとんど守られず、違反が恒常化しているからだ。
 そもそもは市街地に囲まれた基地でのオスプレイの運用に無理がある。夜間飛行を「必要最小限」にするとの約束に反する午後10時以降の飛行も相次ぎ、騒音被害は拡大している。沖縄での通常訓練の一部の本土分散を検討するとした項目についても、日本政府が努力姿勢をことさら強調する一方、実態は全く進展していない。日米合意は既に破綻している。
 ディマース氏は先月ハワイで死者2人を出したオスプレイの墜落事故に関し「残念ながら事故は完全には避けられない」と述べた。発言の通り、普天間への12年10月の配備後もオスプレイは米本土などで着陸失敗を繰り返している。不安を払拭させるのには程遠いのが現実だ。
 ハワイでの事故後、米海兵隊は、原因究明までの飛行中止を求めた県などの要請を無視する形で飛行を継続させている。
 地元の最低限の要望にさえ耳を傾けず、配備に際して約束した政府間の合意さえ守れないというなら、これ以上沖縄の空を飛ぶべきでないことは明らかだ。