<社説>18歳選挙権成立 「健全な批判力」養おう


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 選挙で投票できる年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公職選挙法が17日の参院本会議で可決、成立した。来年夏の参院選から適用される。

 新たに有権者となる若者には高校生も含まれる。若年層の投票行動を促すには、学校での政治教育の在り方も重要となる。一方で政治家が身近な課題としてより具体的に政策を訴えるかも問われる。
 過去の衆院選を見ると、20代の投票率には一つの傾向が見て取れる。20代の投票率が初めて60%を下回った1983年は直前に故・田中角栄元首相のロッキード事件有罪判決があった。その後50%台半ばで推移したが、93年には47%とついに50%台も維持できなくなった。直前の92年には金丸信・元自民党副総裁への違法献金事件があった。40%を割った2012年は変革を期待された民主党が下野した。
 こうした結果から見えるのは、若者の政治不信が中高年層より強く、それが棄権という行動につながったのではないかということだ。
 その意味で政治家には現実の課題と将来への展望をより具体的に語ることが求められる。有権者数が多く、投票率も高い中高年層を意識した政策だけでなく、選挙を通して若者が社会の課題解決に関与できる機会を増やすよう政策の多様性も必要だ。
 同様に学校教育の場でも政治との関わりがさらに求められる。69年に出された文部省(当時)通知は高校生の学校内外の政治活動を禁止したが、「政治的教養」を身に付けることは禁じていない。
 政治的教養とは通知にもあるように「自己の意見を正しく表明するとともに他人の意見に耳を傾け、これを尊重する」態度のことだ。熟議と言い換えてもいい。民主主義社会にとって当然といえる。
 まだ実践例は少ないが、例えば2010年には神奈川県の全県立高校144校が参加して参院選模擬投票が行われた。県内でも12年に太平洋・島サミットと題し、南太平洋の14カ国1地域と国内の高校生が環境問題について話し合い、各国首脳への提言をまとめた例もある。
 主権者教育とは意思決定過程を学び、さらに政治、あるいは現実の課題に対して健全な批判力を養うことだともいえる。新たに有権者として社会に関わる若者が失望しないよう、学ぶ仕組みをつくるわれわれにも重い責務がある。