<社説>子宮頸がんワクチン 健康被害者の早期救済を


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 国が積極的に勧奨していた子宮頸(けい)がんワクチン接種で、県内では15日時点で24人に副反応があることが分かった。2月時点では6人に重い後遺症があり、通学が困難になった人がいることも明らかになっている。

 副反応は頭痛や全身の倦怠(けんたい)感、歩行障害、睡眠障害など多岐にわたり、日常生活に大きな支障を来している。宮古島子宮頸がんワクチン副反応被害者を支える会は県に対し、県内どこでも等しい支援が受けられる助成などを求めた。
 宮古島市は独自に副反応治療費や渡航費などの助成を決めている。県内各自治体への広がりを望みたい。
 この問題には、国が積極的に関わり、被害者を支援すべきである。国は標準的な接種期間の前に、接種を促すはがきなどを各家庭に送るなどし、積極的に接種するよう呼び掛けていた。ワクチン接種にはリスクが伴うとはいえ、健康被害を訴える多くの人たちは積極的に勧めた国を信頼して接種したことは想像に難くない。
 子宮頸がんワクチン接種による健康被害も、国の予防接種後健康被害救済制度の対象になる。だが、申請しても審査に時間がかかったり、不支給の決定が下されたりで副反応に苦しむ人たちが納得する救済は進んでいない。
 接種後に発生した症状とワクチンとの因果関係については、専門家の間でも見解は分かれている。だからといって、副反応に苦しむ人たちを放置するようなことがあってはならない。
 宮古島市の女子高生は中2のころ、11年8月~12年2月に規定通り3回接種し、全身の痛み、発熱、頭痛、倦怠感などが始まった。今も毎月、本島と本土の2病院に通い、医療費は月30万円にもなるという。他にも同様な人はいるだろう。
 国内では年間約1万5千人が子宮頸がんと診断され、約3500人が死亡している。近年は20~30代の若年層の発症増加が問題となっている。子宮頸がんワクチンには予防効果が認められ、13年4月、小6~高1女子への定期接種が始まった。
 だが、同年6月には積極的勧奨が中止された。わずか2カ月での方針転換は、国の判断に甘さがあったと言わざるを得ない。
 副反応に苦しむ健康被害者の早期救済を国に求めたい。