<社説>核燃料再処理容認 「核軍縮・不拡散」に反する


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 政府はインドに輸出する日本製原発の使用済み核燃料の再処理を認める方針を決め、インド側に伝えた。インドは核保有国である。再処理によって生成されたプルトニウムが核兵器に転用される可能性は高い。極めて危険な決定であり、許されるものではない。

 安倍政権は東京電力福島第1原発事故の収束作業も見通せない中、原発再稼働に前のめりになり、海外輸出に奔走している。そのこと自体問題である。核燃料の再処理を認めてはならないし、原発も輸出すべきではない。
 再処理を容認することは、日本の「核軍縮・不拡散」政策にも反する。
 日本はインドへの原発輸出を可能にする原子力協定交渉を2010年に始めた。再処理を認めるよう要求するインドに対し、日本は日本製原発に関わるプルトニウムを軍事転用しないことを担保する歯止めを求めている。
 具体的には再処理で出るプルトニウムなどの量や所在を記した目録を毎年提出することを求めたが、インドは拒否した。インドはプルトニウムを軍事転用するとみて間違いなかろう。
 実効性のある歯止め策で合意できない以上、インドに原発輸出はできないと通告することが筋である。原発ビジネスを優先し、軍事転用の懸念が払拭(ふっしょく)されないまま核燃料の再処理を認めることはもっての外である。
 だが日本と共に原発売り込みを狙う米国が再処理を容認していることで、日本も米国に追随した。日本は独立国としての主体性があるのか、疑わしい。
 インドは核拡散防止条約(NPT)に加盟していない。1974年には再処理で生成したプルトニウムを使用して初の核実験を実施した。インドが再処理でプルトニウムを生成すれば、インドと3度戦争した核保有国のパキスタンを刺激しかねない。両国の核軍拡競争に火を付ける危険性が高まる。
 政府は2014年4月、海外に活路を見いだそうとする国内の原発メーカーの意向をくみ、「世界の原子力の平和利用に貢献していく」とエネルギー基本計画に明記した。安倍晋三首相は原発輸出に向けて各国でトップセールスを展開している。
 唯一の被爆国として「核なき世界」の実現を目指すべき日本に求められる役割とは懸け離れている。