<社説>翁長・ケネディ会談 大使は調査実現に尽力を


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 名護市辺野古冲の調査を認める方向で、ぜひリーダーシップを発揮してもらいたい。

 翁長雄志知事が東京都内でケネディ駐日大使と会談し、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する方針を伝えた。昨年12月の知事就任後、会談するのは初めてだ。
 知事側は当初、5月下旬からの米国訪問前の会談を模索していた。実現が遅れたが、移設計画の見直しを米大使にも直接求めた点は意義あることと言える。
 翁長知事は会談で、知事選など辺野古移設が争点となった昨年の一連の選挙結果に触れ「辺野古に基地を造らせないということが沖縄の民意だ」と伝えた。
 会談は非公開で行われた。知事によると、ケネディ氏からは米軍のプレゼンス(存在)は重要だとの話などはあったが、移設問題で直接発言はなかった。一方、米大使館は会談後、ケネディ氏が辺野古移設について「唯一の解決策」との認識を示したと発表した。
 説明は食い違うが、いずれにしてもケネディ氏は沖縄の民意と向き合ってはいない。
 県はことし2月、沖縄防衛局が辺野古沖で進める海底作業で、県が許可した岩礁破砕許可の区域外でサンゴ礁を破壊した可能性が高いとして、船舶の航行が制限される米軍の臨時制限区域内への立ち入り調査を求めた。
 ところが4カ月たっても許可権者である県の調査は実現していない。非常に理不尽であり、主権国としても不愉快な事態だ。
 県は調査について外務省に再三、確認しているが「米軍で検討中と聞いている」との返答が続いている。対米追従姿勢がここでも見える。外務省は筋を通し、米軍に早急に調査を認めさせるべきだ。
 ケネディ氏は知事から調査に協力を求められたが、コメントはなかったという。不誠実な対応だ。
 会談で知事は、安全保障は日本の国民全体で負担すべきだとして、基地の過重負担解消に協力を求めた。だがケネディ氏は、日米同盟に関する沖縄の「貢献」に謝意を示したという。知事の要求にきちんと答えておらず、極めて残念だ。
 ケネディ氏は23日の沖縄全戦没者追悼式に参列する意向だ。沖縄戦70年の今こそ、米政府は沖縄の異議申し立てに正面から応えるべきだ。ケネディ氏は民意に応える姿勢をぜひ示してもらいたい。