<社説>知事「平和宣言」 新基地は造らせない 「恒久平和の発信地」実現を


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 戦後70年の沖縄全戦没者追悼式が「慰霊の日」の23日、糸満市の平和祈念公園で執り行われた。各地で慰霊祭があり、恒久平和への願いが県内を覆う一日となった。

 県民の願いに応えるように、翁長雄志知事は平和宣言で沖縄を「恒久平和の発信地」とし、「輝かしい未来の構築に向けて全力で取り組む」と約束した。
 知事は政府に対し、新基地建設中止の決断も求めた。「恒久平和の発信地」「輝かしい未来」の最大の阻害要因は米軍基地である。当然の要求だ。日米両政府の壁を突き崩し、「恒久平和の発信地」の実現に向け、新基地は造らせないことを戦没者に誓いたい。

 県民意思を最も反映

 知事の平和宣言はここ数年の平和宣言の中で、県民の意思を最も反映したものだった。高く評価したい。
 知事は「国民の自由、平等、人権、民主主義が等しく保障されずして、平和の礎(いしずえ)を築くことはできない」と強調した。
 過重な米軍基地負担のことだけではない。昨年の名護市長選や県知事選、衆院選沖縄選挙区で米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する候補が当選したことを、一顧だにしない日米両政府を批判したものである。
 安倍晋三首相とケネディ駐日米国大使も追悼式に参列した。知事の言葉は多くの県民の思いを反映したものだと受け止め、政策に反映させるべきだ。
 普天間飛行場の辺野古移設が「唯一の解決策」とする政府に、知事は「固定観念に縛られず」に移設作業の中止を決断するよう求めた。ケネディ大使には米政府にも同じことが求められていると受け取ってもらいたい。
 知事は「県民の思いとは全く別に強制接収された世界一危険といわれる普天間飛行場の固定化は許されず、『その危険性除去のため辺野古に移設する』『嫌なら沖縄が代替案を出しなさい』との考えは、到底県民には許容できるものではない」と述べ、新基地建設断念を重ねて求めた。
 戦後70年も危険な状態を放置し、沖縄の要求に耳を傾けようとしない日米両政府に対し、多くの県民は知事と同じ思いを抱いている。真の民主主義国家なら民意の重みを無視できないはずだ。
 普天間飛行場の危険性除去については、占領下の民間地奪取を禁じるハーグ陸戦条約に反して土地を強奪した米政府、米軍に基地を提供する日本政府が責任を持って行うべきものである。理不尽な対応に終止符を打つべきだ。

 不誠実な首相の言葉

 首相は「沖縄の人々には米軍基地の集中など、永きにわたり安全保障上の大きな負担を担っていただいている」と述べた。続けて西普天間住宅地区が3月に返還されたことを成果とし「今後も引き続き、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」と述べた。
 真に基地負担軽減に全力を尽くすならば、辺野古での新基地建設はあり得ない。首相の言葉は不誠実だ。
 首相は「筆舌に尽くしがたい苦難の歴史を経て、今を生きる私たちが平和と安全と自由と繁栄を享受していることをあらためてかみしめたい」とも述べた。
 「私たち」に県民は入っているのだろうか。米軍基地から派生する事件、事故は枚挙にいとまがない。県民は「平和と安全」を享受してはいない。
 首相は「戦争を憎み」「これからも世界平和の確立に向け、不断の努力を行っていかなくてはならない」と述べた。安保法制に見られるように他国が攻撃された場合でも、参戦できる国に変節させることがその内実である。
 沖縄戦の犠牲者を哀悼する追悼式で、空疎な言葉を繰り出すのはいかがなものか。
 「軍隊は住民を守らない」ことは沖縄戦が証明している。首相はいま一度立ち止まり、沖縄戦の教訓を学ぶべきだ。