<社説>日韓国交50年 関係改善へ努力積み重ねよ


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 日本と韓国の国交正常化から50年を迎え、記念行事が開かれた。半世紀の節目に生まれた関係修復の機運を着実に高めたい。

 東京とソウルで開かれた記念行事には安倍晋三首相と朴槿恵大統領がそれぞれ出席し、未来志向の関係構築への意欲を表明した。
 安倍首相は都内での行事で「手を携えて新しい時代を築き上げていこう」と呼び掛け、朴氏はソウルで「共存共栄の未来を目指し、共に歩んでいく転機とすべきだ」と強調した。
 両首脳の出席は直前に突然決まったが、双方とも友好ムードを演出した。「従軍慰安婦」に象徴される歴史認識問題や竹島問題などを背景に、両国関係は国交正常化以来、最悪と言われるほど冷え込んでいるだけに、今回の接近を関係を立て直す好機とすべきだ。
 関係改善はもちろん一筋縄にはいかないだろう。朴氏は未来志向の関係構築への意欲を示しつつ「歴史問題という重荷を和解と共生の心をもって下ろせるようにしていくことが重要だ」と求めた。
 今回の接近の背景には日韓関係悪化を懸念する米オバマ政権の意向があったとされる。日本側には韓国の姿勢が今後軟化するとの見方もあるが、対日関係をめぐる韓国の状況は1965年の国交正常化時とは大きく変化している。
 韓国はこの50年で民主化が進展し、経済が大きく成長した。北朝鮮に対する影響力も考慮し、中国との関係も強めている。一方で朴氏はことし5月、新たな対日戦略として歴史問題と経済や安保を分離して対応する方針を示した。
 日韓関係の最大の障害である「慰安婦」問題で日本側は、50年前の日韓基本条約・協定により「解決済み」との立場だ。だが米国をはじめ国際社会は日本に厳しい視線を注いでいる。歴史と真剣に向き合う姿勢が何よりも求められている。
 日韓は「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産の登録に向けて協力することでも一致した。こうした取り組みを通じて、関係修復を確かなものにしなければならない。
 安倍首相と朴氏は一度も首脳会談を行っておらず、早期の実現へ双方が冷静で真摯(しんし)な努力を積み重ねるべきだ。一方、首相は夏に戦後70年談話を出す予定だが、これが関係改善の努力に水を差すようなことがあってはならない。歴史を直視し、国際社会の信頼を得るような談話でなければならない。