<社説>沖縄料理の価値 誇り持って食文化守ろう


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 先人の暮らしの知恵が育んだ沖縄料理は県民の財産である。誇りを持って沖縄の食文化を守り、次世代へ伝えていきたい。

 諸見里明県教育長が24日の県議会で沖縄料理の無形文化財指定に向けて調査する方針を明らかにした。健康長寿の復活が叫ばれる中で時宜を得た取り組みである。県民の理解と協力で文化財指定を実現したい。
 沖縄料理は日本本土の食文化にはない独自性と多様性がある。中国の冊封使をもてなす「御冠船(うかんしん)料理」など宮廷料理が発達した。県民生活レベルではチャンプルーなどの家庭料理が定着している。沖縄そばは全国に認知されている。
 伝統芸能や美術工芸と同様、沖縄の食文化もさまざまな国や地域との交流を重ねる中で築かれた。中国の影響が色濃い豚肉の多用や北海道産の昆布の活用などである。異質な文化を取り入れ、独自の文化をつくり上げてきた沖縄の寛容と進取の精神がここに表れている。
 沖縄料理の無形文化財指定は、沖縄の食文化を継承する上で大きな意義を持つ。その前提として、広く県民が沖縄料理について学び、それぞれの家庭で食べるという実践が求められる。
 例えば「沖縄料理とは何か」という定義付けが課題となる。「ポーク卵」など米統治時代の名残である独特な家庭料理を沖縄料理の枠内に含めてよいのかを議論することは、食文化の多様性を考える上で有意義であろう。
 沖縄料理の実態調査も必要となろう。県民は沖縄料理を家庭で食べているのか、外食産業に頼っているのか。どのようなメニューが好まれているのか。島野菜などの県産食材を取り入れているかなどの総合的調査は文化財指定を実現する上で基礎資料となる。
 健康長寿との関わりも重視しなければならない。沖縄の平均寿命の順位が下落した要因として食生活の変容が指摘されている。
 沖縄の伝統的な食生活を取り戻せば、問題視されている高カロリー、脂質や塩分の過剰摂取を抑えることができる。沖縄料理の伝承と普及は長寿復活の鍵を握るのである。
 和食は2013年、「日本人の伝統的な食文化」として、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に登録された。沖縄料理も世界に向けて堂々と発信できる財産である。県民の暮らしの中でその価値を確認しよう。