<社説>介護職員不足 待遇・評価の仕組み改善を


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 将来への不安にさいなまれては、人は幸福を実感できまい。超高齢社会に突入した日本では老後を支える施策は不可欠である。

 その意味でこれは最優先で対処すべき課題だ。2025年に必要な介護職員は全国で253万人に達し、現状の増員ペースでは38万人不足することが厚生労働省の推計で分かった。対策が急がれる。
 15年前に55万人だった全国の介護職員は今、171万人と3倍に増えている。それでも不足感がある理由は、離職率の高さよりむしろ新採用が難しい点にある。離職率は確かに高かったが近年は低下し、13年度は全産業平均と大差なくなっている。
 介護関連団体の調査によると、それでも人手不足である理由として事業所側が挙げるのは「採用難」が最も多い。有効求人倍率が14年7月時点で2・18倍に達したことがそれを裏付ける。2人を募集しても1人集まるかどうか、という数字だ。新規採用をいかにして増やすかが最大の課題なのである。
 人材確保策として厚労省は本年度、介護報酬を改定し、賃金が平均で月1万2千円上がるよう手当てした。だが他の職種との平均給与の開きはなお大きい。
 沖縄県の調査では仕事への不満として「賃金が低い」の次に「精神的負担」や「休暇が取りにくい」が上位に並んだ。だとすれば休暇や休憩が取りやすい職場環境の改善が必要だ。事業所の経営努力が求められるが、それだけでは限界があろう。賃金も含めた介護報酬のさらなる改善が求められる。
 介護関連団体の調査では採用難の理由に「社会的評価が低い」の声もあった。介護の分野では資格と給与に相関関係がある。それなら従来以上の資格を創設するのも一案だ。資質や技能の向上が賃金や社会的評価の上昇につながる仕組みを構築し、やる気を引き出して将来設計を描けるようにしたい。
 人手不足は失業率が高い沖縄でも例外ではない。10年後には充足率が8割程度に落ち、4343人が不足する。
 特に離島の対策が急務だ。離島での介護サービスは15%の報酬加算の仕組みがあるが、人員確保はそれでも難しい。報酬加算は被保険者や市町村の財政負担にもなっている。持続可能性を考えた新たな施策が不可欠だ。
 やはり介護の制度設計をやり直すべきではないか。国の財政支出全体を大胆に見直していい。