<社説>基地跡地汚染 国は徹底的な調査継続を


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 米軍基地返還跡地の沖縄市サッカー場から汚染物質を含むドラム缶が発見された問題で、2月に見つかった17本のドラム缶からもダイオキシン類が検出された。

 沖縄防衛局の発表によると、ドラム缶のたまり水(未ろ過水)から廃棄物処理法に基づく排出基準の2100倍のダイオキシンが検出された。公共用水や地下水を対象としたダイオキシン類対策特別措置法に基づく環境基準からは2万1千倍になる。同環境基準は「人の健康を保護する上で維持されることが望ましい」とされるものだ。
 たまり水をろ過した後は、環境基準値の150倍に下がったというが、専門家は「(人が触れる可能性がある状態での)2万1千倍という数値は見過ごせない。異常な数値」(池田こみち環境総合研究所顧問)と懸念を示している。指摘を重く受け止めるべきだ。
 防衛局は「ドラム缶や底面土壌、たまり水は全て回収した。県の地下水調査や周辺河川、河口の底質調査でも基準値超過はなく、周辺に影響を及ぼす可能性はない」と言うが、不安の払拭(ふっしょく)には程遠い。
 現場を視察した沖縄市議らからは市民生活への影響を懸念する声や汚染土壌の管理を不安視する意見が上がった。当然だろう。
 サッカー場から有害物質を含むドラム缶が最初に見つかったのは2013年6月で、これまで108本が発掘された。2月発見のドラム缶の付着物からは発がん性が指摘されるジクロロメタンが、環境省が定める土壌環境基準の45万5千倍で検出されるなど、基準値を上回る複数の有害物質が確認された。
 今後は周辺土壌などの処分と共に、国が地下水などの調査を継続して徹底的に行うべきだ。県や市も積極的に関与してほしい。
 防衛局はベトナム戦争時に米軍が使用した枯れ葉剤があったかどうかについて「証拠は見つからない」と報告した。だが専門家からは枯れ葉剤汚染の可能性は否定できないとの声がある。納得いく説明を求めたい。
 汚染は米軍基地跡地で起きている。本来なら、日本を同盟国と呼ぶ米国が全面的に調査に協力し、汚染の除去にも努めるべきだ。
 米軍に跡地の原状回復や補償義務を免除した不平等な日米地位協定の改定が必要だ。それなくして、かつて安倍晋三首相が前面に掲げた「戦後レジーム(体制)からの脱却」はあり得ないはずだ。