<社説>ギリシャ危機 歩み寄りはできるはずだ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 ギリシャが事実上の債務不履行(デフォルト)状態に陥った。1日の期限までに国際通貨基金(IMF)からの融資16億ユーロ(約2200億円)を返済できなかった。欧州連合(EU)の金融支援も失効し、深刻な事態が同時に生じた。

 欧州はギリシャ危機封じ込みに失敗したといえる。危機の広がりと深まりは何としても避けねばならない。ギリシャはもちろん、国際社会も打開へ向け知恵と分別が問われる。
 ギリシャはことし1月の総選挙で「反緊縮」を掲げる急進左派連合が躍進し、党首のチプラス氏が首相に就任した。
 そのチプラス首相は先週末、突如として国民投票実施を発表した。EU側が金融支援延長の条件とした改革案に反対で、受け入れるか否か国民に問うと言ったのだ。
 改革案は消費税増税や一層の年金削減を含む。首相にしてみれば、年金支給開始年齢引き上げや国防費削減など譲歩案を出したのに、なお緊縮を求められれば受け入れは困難ということなのだろう。
 民意の後押しを得たいのか、EUが最後は譲歩すると読んだのか。首相はIMFに返済期限延期を、EUには支援期間の1カ月延長を求めた。だがIMFもEUも拒み、瀬戸際戦術は失敗した。
 国民投票も無理がある。発表から投票の実施までわずか10日ほどしかない。改革案の内容もほとんど周知されないままだ。この段階での実施は無謀と言うしかない。
 とはいえギリシャ側を一方的に非難するのは妥当でない。同国は公務員削減や年金カットなど緊縮財政を続けてきた。財政危機が表面化した2009年以降、EUが支援と引き換えに求めたからだ。影響は深刻で、失業率は約26%、若年層では5割にも達する。職を持つ人も給料は激減し、相次ぐ増税で手取りはもっと減った。国民の閉塞(へいそく)感は極限まで高まっている。
 だからこそ急進左派が躍進したのだ。EU側は今回の財政危機でギリシャ国民が音を上げ、チプラス氏が政権から退くことになると見込んでいるかもしれない。だが同氏が退陣しても国民の不満が消えるわけではない。マグマは地下に潜るだけだ。
 市場原理主義による極端な緊縮政策で国民生活が破壊された70年代の南米の惨状を繰り返してはならない。ギリシャのユーロ離脱も望ましくあるまい。それなら双方とも歩み寄りできるはずだ。