<社説>米キューバ国交再開 負の遺産解消を歓迎する


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 半世紀余にわたる敵対関係を解消する歴史的な一歩を歓迎する。関係正常化を目指す両国の対話を見守りながら、国際社会への波及効果を期待したい。

 オバマ米大統領とキューバのカストロ国家評議会議長が交わした親書で、1961年の断交から54年ぶりに国交を回復し、双方の大使館を再開させることを確認した。
 両国は昨年12月に国交正常化交渉の開始を発表し、世界を驚かせた。それから半年で大きな成果を結ぶこととなった。雪解けに向けて対話を重ねてきた両国を高く評価したい。
 残り任期1年半のオバマ大統領にとって、国交再開は外交上の大きな業績となる。キューバも経済成長の呼び水となるはずだ。そのような両者の思惑も対話を加速させる効果を持ったであろう。
 59年のキューバ革命に端を発した両国の対立は冷戦時代を象徴するものであった。ソ連がキューバにミサイル基地建設を計画し、米国が配備を阻止しようと海上を封鎖した62年のキューバ危機で、世界は核戦争の恐怖に直面した。
 その両国の国交再開は冷戦時代の負の遺産がようやく解消することを意味する。米ソが引き起こした不幸な対立が終わる世界史的な意義は極めて大きい。
 課題も残されている。キューバに対する米国の経済制裁が直ちに解かれるわけではない。キューバが求めるグアンタナモ米海軍基地の全面返還について米側は交渉に応じる姿勢を見せていない。人権問題についても両国間では隔たりがあり、これまでの国交正常化交渉の課題となってきた。
 真の和解に向けた両国の交渉はこれから正念場を迎える。半世紀余にわたる対立を解きほぐす作業は困難が伴うだろう。「変革の姿」(オバマ大統領)をより大きく育てる粘り強い交渉を求めたい。
 両国の対話の進展は、歴史問題や領土問題をめぐって近隣諸国と関係が悪化した日本にとっても手本となる。和解に向けた米国とキューバの関係正常化交渉から学ぶ点は多い。
 両国の国交再開が北朝鮮やイランなど国際社会で孤立を続ける国々の外交姿勢に影響を与える可能性もある。北東アジアや中東の緊張緩和が進めば沖縄の米軍基地問題の打開に向け好材料となろう。
 沖縄の米軍基地も冷戦構造の遺産である。その解消を求める意味でも両国関係の改善を評価したい。