<社説>「骨太方針」 儲からない構造の転換を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 政府は経済財政運営の指針「骨太方針」と新たな成長戦略を閣議決定した。

 最大の焦点の財政再建策は「目安」にとどまり、厳格な数値目標は設けなかった。成長戦略も迫力不足で「骨太」は看板倒れと言わざるを得ない。
 「骨太方針」は、国内総生産(GDP)の成長率を実質2%、名目3%を達成することで税収を増やす。だが、成長を後押しするはずの成長戦略は目新しいものは見当たらない。
 小手先の政策ではなく、政府は、外国から稼いだお金がたまらない現在の産業構造を転換することに力を入れるべきだ。
 先日、日本農業新聞沖縄印刷開始記念シンポジウムで基調講演した地域エコノミストの藻谷浩介さんは「欧米アジアから稼いで資源国に貢ぐ」構造だと分析した。
 日本の輸出額は円高、ユーロショックに見舞われた2014年でも、バブル期の1・5倍以上の高水準で推移している。米国、ドイツ、韓国、台湾、インドなどに対し貿易黒字で、経常収支は黒字だ。しかし、稼いだお金は中東に石油、ロシア、マレーシアに石油と天然ガス、オーストラリアに石炭とウランの燃料代を払って赤字に陥っているという。
 石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料の輸入額が増加した原因は、原発停止によって化石燃料の輸入量が増加したからではない。藻谷さんによると、円安により、輸入する燃料価格が高騰したからである。このまま円安が続けば赤字は拡大し続ける。
 儲(もう)からない構造から脱却するために、本気で体質改善が必要だ。例えば、赤字の主因になっている燃料の輸入量を減らすにはどうするか。太陽光や風力、水力などの再生可能エネルギーの使用量を増やす必要がある。
 しかし、2030年の電源構成比率の政府案は再生可能エネルギーを現在の約2倍に当たる「22~24%」に増やすとしている。この程度では体質改善にならない。今回示された新たな成長戦略も「再生可能エネルギーは、固定価格買い取り制度の見直しなど必要な対策を行う」と書いてあるだけだ。政府の本気度が伝わらない。
 日本の借金は1千兆円を超え、GDP比で見ると、ギリシャを上回る。子や孫の世代に先送りは許されない。体質改善は急務だ。