<社説>安保法制首長調査 政府は反対多数受け止めよ


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 安倍政権が安全保障関連法案の成立を今国会で目指していることについて、琉球新報社が県内41市町村の首長を対象に実施した緊急アンケートで、回答した33市町村長の約7割に当たる23人が反対した。慎重姿勢を求める声や国民不在の審議だと批判する声も上がっている。法案に「賛成」と回答した首長は一人もいない。政府はこうした反対の声を真摯(しんし)に受け止める必要がある。法案成立を拙速に進めるべきではない。

 共同通信社が6月に実施した全国電話世論調査では安保法案の今国会成立に「反対」が63・1%に上っている。さらに琉球新報社と沖縄テレビ放送が5月末に実施した県内世論調査では73・2%が「反対」と回答した。全国より約10ポイント上回っている。首長の割合は県内世論を反映している。
 県内で法案に反対する意見が全国より多いのは、県内世論調査で70歳以上の反対が81・1%に上ることをみても、沖縄戦の体験が影響していると考えるのが妥当だ。
 首長も法案成立によって沖縄が戦争に巻き込まれる可能性について、57・6%の19人が「高くなる」と回答し「変わらない」は12・1%の4人で「低くなる」は一人もいない。首長からは「米軍・自衛隊の基地が多く存在することから、その影響が危惧される」「わが国の戦後処理は終わっていない」などの意見が上がっている。沖縄が再び戦場になることを危惧しているのだ。
 同法案と憲法との関連についても回答者の6割に当たる20人の首長が「憲法に違反している」と回答し「違反していない」はゼロだった。衆院憲法審査会の質疑に招かれた憲法学の専門家3人全員が「憲法違反」と表明した。廃案を求める声明に賛同する学者の人数は6月末で6700人を超え、同時期に衆参両院に提出された廃案を求める署名は約165万8900筆に上る。
 さらに87・9%に当たる29人の首長が国民への説明が十分でないと答えている。保守的な立場を取る首長でさえ、説明が不十分だと思っている。しかし自民党の高村正彦副総裁は「いつまでも延ばせばいいという話ではない」と述べ、国民の理解が得られなくても採決に踏み切る考えを示している。言語道断だ。国民不在のまま法案を強行採決することなど許されるはずがない。