<社説>報道圧力批判集会 不戦に根差す言論守りたい


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 報道を弾圧して知る権利を押しつぶし、沖縄戦後史と県民の歩みを蔑(さげす)む虚構を吹聴することを許さない。自民党の国会議員らによる報道圧力に抗(あらが)い、民主主義を守り抜く沖縄社会の決意が発信された。

 4日に開かれた「言論・表現・報道の自由を守る県民集会」は、会場に入りきれないほどの人が押し寄せ、熱気が渦巻いた。
 議員と作家の百田尚樹氏による言論封殺発言や米軍基地形成過程に関する重大な事実誤認の垂れ流しへの怒りを共有し、会場は一体感に満ちた。
 言論弾圧と歴史の歪曲を許さないと訴え、発言の撤回と安倍晋三自民党総裁らの謝罪を求めた集会決議は今回の問題の不当性を凝縮している。沖縄が日本の民主主義を守るとりでの役割を果たしていく宣言に等しい内容に映った。
 「つぶさないといけない」対象に沖縄の2紙が名指しされた。基地をめぐる沖縄の不条理に立ち向かう報道を封殺する動きは、沖縄戦と地続きの米軍基地問題を踏まえた不戦の誓いを踏みにじる。沖縄社会全体に対する挑戦と受け止めた弁士の発言は熱を帯びた。
 基調提起に立った琉球大学教授の高良鉄美氏は、なぜ2紙と沖縄の民意が標的にされたかを分析した。自衛隊の戦地派遣につながる安全保障法制と辺野古新基地に鋭く反対する沖縄の民意の広がりに対し、安倍政権が危機感を抱いている表れとの見方を示した。
 その上で高良氏は「今回は氷山の一角だ」と安倍政権の体質に警鐘を鳴らした。
 琉球新報の潮平芳和編集局長は「安倍政権は全体主義の道に国民を導く愚を犯さないでほしい。今回の問題を未完の民主主義の再生・強化の出発点にすべきだ」と訴えた。沖縄タイムスの石川達也編集局次長は「権力側でなく、住民に寄り添うメディアがなぜ偏向か。力のない側に立ち、均衡を取り戻すことが大切だ」と強調した。
 2氏の発言に激励の指笛や拍手が鳴り響いた。県民の声を支えとし、権力の暴走を監視し、報道の自由を守る使
命をあらためて深く胸に刻みたい。
 ワイツゼッカー元ドイツ大統領の歴史的演説が浮かぶ。「過去に目を閉ざす者は結局、現在にも盲目となる」。歴史に学ぶことを拒めば、現在や未来を見通せず、国を誤った方向に追いやる。不戦に根差した沖縄から暴走に歯止めをかけるのろしを上げ続けたい。