<社説>ギリシャ国民投票 危機回避に向け協議を


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 事実上の債務不履行状態に陥っているギリシャ国民は、欧州連合(EU)が求めていたさらなる財政緊縮策を拒否した。

 5日の国民投票は、EUが突き付けた年金の追加削減や増税を軸にした財政緊縮策の是非が問われたが、反対票が6割を超えた。
 衝撃を受けているEUは7日にユーロ圏首脳会談を招集するが、金融支援再開は見通せない。世界経済にも株安などの悪影響が生じている。
 国民投票結果を踏まえ、ギリシャ、EUの双方に危機回避に向けた行動が求められる。
 2009年に赤字を過小に見せ掛ける粉飾による財政危機が発覚して以来、EU側は支援の引き換えに公務員3万人の削減や年金カットなどの緊縮財政を迫った。08年と比べ、ギリシャの国内総生産は25%も下落し、消費が冷え込む悪循環が続き、国民生活は窮乏した。
 EUに対する根強い反発が予想以上の反対票に表れた格好だ。
 チプラス首相は「歴史的なページを開いた。交渉のテーブルに着く」と勝利宣言し、世論を背にEU側に譲歩を迫っている。
 EUによる追加支援が実施されなければ、ギリシャの財政は破綻が避けられない。ユーロ圏から離脱に踏み切らざるを得ない事態を招きかねない。
 それは、かつてないユーロ圏の分裂を意味し、欧州統合の象徴でもある単一通貨ユーロの「失敗」を印象付けることになる。財政基盤が弱いイタリアなどに波及するとの見方もある。
 第2次世界大戦を防げなかった反省から出発した欧州統合の理念が揺らぐ重大な事態である。ギリシャのユーロ圏離脱を招けば、EUにとっても大きな打撃となる。
 ギリシャ不信を脇に置いて、EUはできるだけ早く協議の席に着き、危機打開策を探るべきだ。国際社会も分裂回避を後押しし、対話の機運を高めねばならない。
 ギリシャは1日までの期限内に国際通貨基金からの融資16億ユーロ(約2200億円)を返済できず、EUの金融支援も失効した。円に置き換えれば、借金返済のために借金を重ねるギリシャ財政は、40万円の借金のうち2千円余さえ支払えない状況にある。破綻状態に近い。
 欧州統合の崇高な理念に立ち返り、EU加盟国は債務減免などの損失が生じても、これまでと異なる救済策を模索すべきであろう。