<社説>なでしこ準優勝 底辺拡大の契機にしたい


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 頂点には届かなかったが、最後まで懸命にボールを追い掛けるそのプレーは、多くの人たちに感動と勇気を与えたに違いない。

 サッカー女子ワールドカップ(W杯)決勝で日本代表「なでしこジャパン」は米国の厚い壁にはね返された。だが前回大会の劇的な初優勝をはじめ、五輪を含めこの4年間で3大会連続で決勝に進出している。世界にあらためてなでしこの実力を強く印象づけたと言えよう。
 決勝では2-5と予想外の大差がついた。世界最強の米国に対し俊敏なパスワークで対抗したが、序盤の大量失点が痛かった。身体能力面でも差があった。
 勝敗を分けたのはそれだけではない。米国は前回大会でノーマークだった日本に屈した反省から、日本の高度なパス回しなどの分析を進めていたという。高さを警戒する日本代表の裏をかき、米国は低いボールから得点を重ねた。
 ただ最強国もかなり研究していた事実は、それだけ実力が認められていることの裏返しだ。今大会では体格面で勝る海外勢に対し、持ち前の組織力で立ち向かい、接戦を相次いでものにした。技術に加え、精神面の強さも世界から評価されるゆえんであろう。
 今回のメンバー23人のうち、17人は前回大会と同じだった。経験が大きな力となったが、今後は若い世代の台頭も待たれる。
 そのためには女子サッカーの裾野を広げる必要がある。だが国内の競技人口は約3万人にとどまる。米国は実に約160万人だ。
 日本では小学校で男女合同チームが多いが、中学以降は部活動などもまだ少ない。日本サッカー協会などが新たな支援策を検討しているが、取り組みが急がれよう。
 決勝前日、なでしこの宮間あや主将は女子サッカーへの関心の薄れに危機感を示し「(連覇することで)ブームではなく文化になっていけるのではないか」と話した。
 4年前のW杯初制覇の熱気が冷めた後は、国内リーグの観客は伸び悩み、スポンサーも減少している。代表直前までアルバイトをしていたという話もあるなど、男子に比べ待遇も恵まれておらず、課題は多い。
 競技人口拡大に向け、まずは10代の選手の受け皿づくりや指導者たちの養成が求められよう。なでしこの健闘をあらためてたたえるとともに、底辺拡大へ関係者の着実な取り組みに期待したい。