<社説>川内原発再稼働 福島の教訓を生かせ


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 わずか4年で福島の教訓を忘れたのだろうか。九州電力は川内原発1号機の原子炉に核燃料の装填(そうてん)を始めた。8月13日前後に発電と送電を開始するという。東京電力福島第1原発事故の後、新規制基準に適合した原発としては全国で初めての稼働となる見込みだ。

 3・11で「安全神話」が崩れ去って以来、国民の原発に対する視線は厳しい。共同通信の全国世論調査(6月)では原発再稼働に63%が反対し、賛成は31%だった。
 国民の声を正面から受け止めず、政府が原発再稼働に前のめりなのはなぜか。一つには電気料金の上昇で競争力低下を懸念する経済界の意向があるとされる。
 しかし原発のコストは安いのか。東京電力の原子炉設置許可申請書によると、福島第2(1~4号機)、柏崎刈羽(1~7号機)の発電原価は10・32円から19・71円となっている。水力の10・6円、石油火力の12・2円とほぼ同水準で石炭などの7円より実際は高い。
 原発にかかるコストはこれだけにとどまらない。遠隔地にあるため送電費用がかさむこと、さらには使用済み核燃料の処理や耐用年数を終えた廃炉の費用など間接的な負担は膨大な額になる。
 福島のように万が一の事態が起きれば、周辺住民の避難や生活の保障、汚染された土地の取得など政府の負担はさらに増える。
 問題は他にもある。例えば使用済み核燃料は各地の原発で大量に貯蔵されているが、最終処分場は候補地すらない。
 処分方法は再処理後の廃液をガラスと混ぜて固体化し、地下約300メートルに埋めるというものだ。地震国・日本で安全性が確保されるのか疑問だ。安全に「絶対」がないことは福島から学んだはずだ。コストや燃料処分方法で課題が多い原発は、未来の世代に危険と負担を先送りするにすぎない。
 さらに電力各社の供給のピークは例年8月第2週か第3週を頂点に9月へかけ緩やかに下がる。電力需要が下がる時期にあえて再稼働することに意味があるのか。
 2014年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画では「いかなる事情よりも安全性を全てに優先」と原子力発電に対する政府の方向性を明記している。
 福島の教訓を生かすのであれば、政府は自らの政策に従い、原発再稼働は避けるべきだ。