<社説>台風接近 危険を正しく見据えたい


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 台風が次々に発生した。うち少なくとも一つは確実に沖縄を襲う。いよいよ本格的な台風の季節に入ったといえる。警戒を強め、備えを万全にしておきたい。

 台風9号は沖ノ鳥島近海から沖縄方面に向かっており、9日から10日にかけて沖縄に接近し、特に宮古島は直撃の可能性が高い。8日夕の段階では「大型で強い」だが、海水温の高い地域を通ることから勢力を増すのは間違いない。「非常に強い」にまで発達するのは確実だ。
 8日昼の段階で暴風域の大きさは半径170キロだが、沖縄付近に達している10日午前には520キロと3倍に膨らむ見込みだ。気象庁は9日の段階で「屋外での行動は極めて危険な風が吹き荒れる恐れがある」としている。最新の台風情報に注意してほしい。
 家の周りで風に飛ばされそうな物は屋内に入れるか固定しておこう。飛んでくる物や街路樹の倒壊などによって負傷する恐れがある。不要不急の外出は控えてほしい。自宅待機に徹し、住宅の強度に不安があれば早めに自主避難したい。
 豪雨による土砂災害にも警戒が必要だ。がけ地や斜面の近くなら、聞いたことのない物音が聞こえたり、湧き水が濁ったり小石が転がったりしたら、土砂崩れの前兆である。一刻も早く避難すべきだ。
 本島周辺の船便は既に多くが欠航となるなど、県民生活に影響が出ている。マンゴーが収穫期を迎えており、農作物など経済的な被害も心配されている。まずは人的被害の防止に最善を尽くそう。
 9号だけではない。台湾付近にある10号は西の中国大陸へそれそうだが、11号は9号のたどった経路と似たような位置にある。9号から3日程度遅れて沖縄を襲う可能性は否めない。今後の進路に注意を払いたい。
 人は予期せぬ事態に直面したとき、「ありえない」という先入観や偏見(バイアス)が働いて、物事を正常の範囲だと思い込もうとするという。これを心理学の用語で「正常性バイアス」と呼ぶ。一刻も早く立ち去るべき事態なのに、逃げ遅れがままあるのは、こうした心理が働いているとされる。
 危険は正しく見据えたい。広島市の土砂災害など、昨年は多くの人命を奪う自然災害が相次いだ。自然を侮ってはならないことをあらためて肝に銘じたい。