<社説>陸自配備要請採択 市民置き去り避けるべきだ


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 宮古島市議会が「自衛隊早期配備に関する要請書」を与党などの賛成多数で採択した。

 下地敏彦市長は採択を受けて「市議会は市民の意見の総意」と述べている。防衛省が計画する陸上自衛隊の宮古島配備に、多くの市民が賛成しているかのような発言である。果たしてそうだろうか。
 配備計画の全体像は市民に示されていない。判断材料がない中で、陸自配備を推進することが「市民の意見の総意」とするには無理がある。
 市長は今後、国と地権者との交渉や施設の法令適合状況を踏まえて態度を表明する考えを示している。結論ありきの感は否めない。市民を置き去りにするような拙速な判断は避けるべきだ。
 市議会は付帯意見として、市が防衛省に対して住民へ説明することを求めている。説明会は陸自配備に向けたアリバイづくりではないはずだ。説明会などを通して多くの民意を吸い上げる必要があると、市議会も判断していると受け止めねばならない。
 市長が市議会の意思を「市民の意見の総意」と重く受け止めるならば、付帯意見も重視するのが筋である。説明会などを通して寄せられる市民の声も踏まえて判断することが最低限必要だ。国や地権者との交渉などを踏まえるだけでは不十分である。
 要請書は自衛隊配備によって「過疎化問題の解消や絶大なる経済効果、雇用の創出、道路等のインフラ整備、災害(台風等)発生時の救援活動、緊急患者の空輸、不発弾の処理」などをメリットに挙げている。
 さまざまな課題の解決を陸自配備に求めた形である。しかしそのような課題は本来、市が国や県と一体となって解決すべき事項である。陸自を配備せずとも解決策はあるはずだ。
 防衛省は宮古島に地対空、地対艦ミサイルを配備する駐屯地のほか、実弾射撃場、関連施設を整備するという。
 「スポーツアイランド」宮古島が「基地の島」となる危険性がある。そのような島になることが市民にとって果たしていいことなのだろうか。
 島の将来に関わることであり、市民の側も議論に積極的に参加する必要がある。陸自配備が地域社会にどのような影響を及ぼすのか。時間をかけて多角的に議論してほしい。