<社説>埋め立て承認検証 知事は報告踏まえ決断を


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 前知事による辺野古の埋め立て承認手続きについて、専門家らが法的手続きに欠陥があるとの報告を出す見通しが強まった。翁長雄志知事は報告を重く受け止め、賢明な判断を下すべきである。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画で、仲井真弘多前知事による埋め立て承認判断の是非を検証するため県が設置した有識者の第三者委員会が、承認手続きに「法律的な瑕疵(かし)がある」との報告書を取りまとめる方針を固めた。
 委員会は今月下旬にも翁長知事に報告を提出する見通しだ。その内容が最終的にどうなるかは分からないが、前知事の承認手続きに瑕疵があったとする判断が出たとしても全く驚きはない。なぜなら承認の直後から、その正当性が強く疑問視されてきたからだ。
 前知事は2013年末、県外移設の公約に反して埋め立てを承認したが、その直前まで県は移設に伴う環境保全について「懸念は払拭(ふっしょく)できない」と説明していた。
 県外からの大量の土砂搬入に伴う外来生物の侵入、ジュゴンやウミガメ、サンゴ・海草類など貴重な生態系の損失、航空機騒音など生活への影響など、県が説明したように、懸念は強く残る。県の環境部長は議会で「懸念は払拭できない」との意見は承認後も変わっていなかったと証言していた。
 埋め立て承認判断では知事の裁量権についても議論となったが、国が申請者の場合でも都道府県知事の裁量権を認めるとの判例がある。事業の必然性をめぐっては、中国のミサイル射程内にある沖縄での新たな海兵隊基地建設に米専門家も異を唱えており、豊かな海を埋め立てる計画の公益性は軍事的にも揺らいでいる。
 翁長知事は委員会の報告に関し「最大限尊重する」と明言している。一方、承認手続きに瑕疵があれば取り消し、瑕疵がない場合も、移設阻止をすると掲げて知事選で大勝した経緯などから、承認の撤回が可能との見解も示している。いずれにしても取るべき道は明らかであろう。
 知事の決断が出たならば政府はそれを厳粛に受け止め、一刻も早く辺野古の作業を停止しなければならない。本来なら昨年の選挙を受けて既に計画が撤回されているべきだ。これまで作業停止を求める県の要請を再三無視してきたが、民主主義を取り戻す最後のチャンスだと理解してもらいたい。